きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

届かぬ想い

あとがき

みなさん、こんばんは! 1月にスタートした「届かぬ想い」も42話にまで膨らみましたが、無事に完結を迎えることができました(๑>◡<๑) 長い間、お付き合い下さりありがとうございました ほんの十数話の予定で始めたこのお話。すべての始まりは【幸せにおなり】…

届かぬ想い42

ふと目を覚ますとすぐ隣でシャルルがあたしを見つめていた。 「おはよう、マリナ」 あたしは贅沢にもシャルルの腕枕でぐっすりと眠っていたらしい。 「おはよう。あんたにしてはずいぶんと早起きね」 時計に目をやるとまだ朝の八時だった。 するとシャルルは…

届かぬ想い40

シャルルに抱きすくめられ、何も考えられないほどにシャルルを感じた。 長い間、彼女を連想させてきたあの香りさえも愛しく、今はふわりとあたしの鼻孔をくすぐるようだった。 シャルルのシャツの首元に鼻をすりすりと擦り寄せ、あたしはそれを堪能した。 「…

届かぬ想い39

あたしに近づいて来たってことは最近会った人の中にその人物はいるのよね。 知り合いの顔を順に思い浮かべてみたものの彼女と関係ありそうな人なんてやっぱりいなかった。 「最近、君の周りに現れた人物。そいつは君に近づき、次第に君との間に信頼関係を築…

届かぬ想い38

「その子?何の話をしている?」 あたしは男らしく認めて責任を取るべきよと諭すように話すと呆れてものも言えないとばかりにシャルルは冷やかな視線をあたしに向けた。 「マリナ、君は何を聞いていたんだ? そんなことあるはずないだろう。 オレが愛してい…

届かぬ想い37

愛を注ぎ込むようにシャルルはあたしにキスをした。優しく甘いキスに胸がジンと熱くなる。シャルルはそっと顔を離し、触れるか触れないかの距離でじっとあたしを見つめた。 「マリナ、君の気持ちを聞かせて」 ゆらゆらと揺らめく瞳があたしの想いを求め、甘…

届かぬ想い36

シャルルが日本に来たのはあたしに会うためだったんだ。 でもなんで彼女を連れて来たりしたんだろう? そう思った瞬間、嫌な予感がした。 フランスって愛に自由と言うか、寛大な国と言うか。 たしか、シャルルのおじいさんもそういったのことに自由な人だっ…

届かぬ想い35

あたしだけを大切だと言ってくれたシャルルの想いが痛いほど伝わってきて胸がいっぱいになった。 優しく包み込む腕はあたしを愛しいと言い、鍛え上げられた広い胸はあたしを守る、と言ってくれているようだった。 だけど、シャルルの纏っている香りだけが想…

届かぬ想い34

な、なによ、その心の中を解剖って……と一瞬思ったけどすぐにそれが何か分かった。 手術が終わりすべてが上手くいったらきちんと話をしようと言ってたシャルルの言葉を思い出した。 そうだ、まだ色々な事がモヤモヤしたままだ。これまでのシャルルの不可解な…

届かぬ想い33

「おはようございます、マリナさん。ご機嫌はいかがですか?」 ロザリーさんは手にしていた花瓶をテーブルに置くとカーテンを順々に開けていく。朝の光が溢れんばかりに部屋の中に差し込み、あたしは眩しさに手で目を覆った。 「マリナさん、起きて下さい。…

届かぬ想い32

病室のドアが開く気配がして入り口に視線を向けた。 「気分はどうだい?痛みはある?」 ドクターウェアをさらっと着こなしたシャルルがこちらに向かって歩いてくる。 見慣れないその姿は何日もかけて研究してくれていたその時の姿を連想させるものだった。 …

届かぬ想い31

その日は案内された病室で過ごし、翌日の手術に備えて必要な検査をいくつか受けただけで終わった。 術前の夕食は消化の良いものしか出さないから期待はするなとシャルルに言われてたけど目の前に置かれたトレーを見てがっかりせずにはいられなかった。 隙間…

届かぬ想い30

それならとその日のうちにあたしはシャルルが所長を務める病理研究所に併設されている病院に入院することになった。 病院に向かう車の中でシャルルはあたしを連れてパリに戻った日から今日までどこで何をしていたのかを聞くことができた。 「前にも一度説明…

届かぬ想い29

どこかで聴いたことのあるような曲が耳へと流れ込んでくる。ヘッドホンをあてているおかげで目を瞑ってしまえばまるでコンサートホールにでもいるかのような感覚になる。 あと一曲、聴き終えたらたぶん検査は終わるはずだわ。 今、あたしが何をしているかっ…

届かぬ想い28

あっ……。 つい口が滑ってしまった。 シャルルは僅かに目を細めるとあたしの中の真実を見極めるかのようにその瞳を鋭く光らせた。 そしてあたしの肩を掴む手に力が入る。 「なぜすぐに言わなかった?!」 責めるかのようなシャルルの言い方にあたしは悔しくて…

届かぬ想い27

「マリナさん、どうかしましたか?!」 あたしは慌てて溢れそうな涙を袖で拭い、俯いたまま前髪を触るフリをして顔を隠した。 「大丈夫よ、何でもないの」 思ってたよりも自分の声が涙交じりで焦った。これじゃジルに泣いてるって思われてしまう。 前にもこ…

届かぬ想い26

抜け落ちていた記憶が次から次へとあたしの中へと流れ込んでくる。 ドアに引き込まれる感触、シャルルの香り、駆け下りてくる靴音、冷たく硬いタイル、そして迫り来る壁……いくつもの記憶の欠片がドッと押し寄せてきてあたしは一気に不安になった。 心に黒い…

届かぬ想い25

シャルルには大切な人がいる。そんなことは分かっている。あの日、彼女を気遣ってシャルルはあたしと同じ部屋で過ごすことを避けた。 手が届きそうなほど近くにいるのにシャルルをとても遠くに感じた瞬間だった。 あの時の寂しさはいま思い出しただけでも胸…

届かぬ想い24

閑静な高級住宅が立ち並ぶ一角にひときわ大きなお屋敷が見える。こうして改めて見るとシャルルって本当にすごいんだなと思った。 シャルルの言った通りあれから四十分ほどでお屋敷に着いた。 シャルルはしばらくのんびり過ごすようにあたしに言うとジルと共…

届かぬ想い23

どんよりとした雲を銀翼に纏わせながらプライベートジェットはまるでパリの街へと吸い込まれるかのように下降を始めた。 エッフェル塔や凱旋門といったパリを代表とする建物が遠くに見える。 この景色を目にするのは六年ぶりだった。懐かしさと共にシャルル…

届かぬ想い22

次の日、あたしは早くに目が覚めた。まだ東の空は白み始めたばかりだった。 昨日は結局、夕食も食べずにそのまま寝ちゃったもんだから要はお腹が空いて目が覚めたってわけ。 シャルルが他の部屋に行ったことはもちろんショックだったし、シャルルとの距離を…

届かぬ想い21

チャイムの音でシャルルの意識はあたしから離れ、来客者へと向けられた。 「ふぅ……」 あたしは思わず安堵の息をもらした。シャルルにあんな風に見つめらたら誰だってドキドキするわよ。 シャルルはあたしから離れると壁に掛けられたインターホンに手を伸ばし…

届かぬ想い20

最上階への直通エレベーターはガラス張りになっていて身がすくみそうなほど高く、東京の街がぐるりと見渡すことができた。 ふわっとした浮遊感をわずかに感じた直後にエレベーターの扉が開いた。 シャルルはさっと動くとあたしに先に降りるように促し、あた…

届かぬ想い19

シャルルは自信に満ちた笑顔を見せながらあたしの目の前まで来ると、確かめるようにあたしの顔を覗き込んだ。 「オレが誰だか知っているだろう?」 それはこれまであたしが何度となく聞かされてきた言葉だった。 「シャルル……」 シャルルはそっと手を伸ばし…

届かぬ想い18

「マリナをパリに連れていく」 マルセル犯人説では確かに腑に落ちない点がある。だがマルセルが無関係であるとも考えにくい。 マリナを狙ったものなのか、ただの事故なのか……。 どちらとも判断がつかない状態でマリナを残していくことはできない。 たとえ今…

届かぬ想い17

「マルセルの会議への参加は教授からの提案ですか?」 教授の目的は会議を成功させ、自らの名を上げることだ。オレが参加する事によって特殊細胞分野での新たな研究を発表することができた。 つまりオレが会議を欠席したものの、すでに教授の目的は達成され…

届かぬ想い16

二人の刑事はマルセルの両側に立つと有無を言わさぬといった様子でマルセルに同意を求めた。 「私が何か?」 マルセルは自分の身に何が起きているのか分からない様子だ。 「あなたを慶西総合病院で見かけたという情報が入りまして」 すかさず年配の刑事が含…

届かぬ想い15

「君が責任を感じる必要はない」 有川沙耶と別れ、オレはマリナを送らせるつもりで待たせたままにしていたハイヤーに乗り込んだ。 彼女がオレとマリナのことを看護師に尋ねていたのは何も知らなかったとは言え 自分が余計なことを言ったせいでマリナが動揺し…

届かぬ想い14

オレはタイルの床を蹴るように階段を駆け上がった。 病棟に続く廊下は見舞い客も多く、辺りを見渡したがそれらしき人物を見つけることはできなかった。人の流れに溶け込んだか。 「くそっ!」 オレをつけ狙っていたのか、パパラッチの類か、それとももっと別…

届かぬ想い13

まさか……。 いや、そうではない。 MRI画像に映し出された白くぼんやりとした影。脳細胞の一部が壊死しているのはこの目で何度も確認をした。 現実を直視しなければならない医師という立場でありながらこれまでの驚異的なマリナの生命力に何度も驚かされた過…