きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

届かぬ想い17

「マルセルの会議への参加は教授からの提案ですか?」

教授の目的は会議を成功させ、自らの名を上げることだ。オレが参加する事によって特殊細胞分野での新たな研究を発表することができた。
つまりオレが会議を欠席したものの、すでに教授の目的は達成されていた。それなのにオレの代役としてマルセルが会議に参加した。

「いや、私の意思ではない。アルディ博士の欠席を聞きつけたマルセルが自ら志願してきた。たしかに会議への参加は我々にとってはとても魅力的なことだ。
一度は消えた参加へのチャンスが彼の元に再び舞い込んできたのです。これも彼の運だと思い……」

教授はそこで言葉を切るとハッとしたようにオレを見た。

研究者として何に重きを置くかはそれぞれだ。名を上げ、より多くの会議でその発言力を持つことを望む者も少なくはない。
マルセルがもしそれを求めていたとすれば……。だが現段階でそれを見極めるのは困難だ。情報が少なすぎる。

教授の元を訪ねた目的は別にあったのだがマルセルのこともあり、日を改めることにした。聞けば教授はまだ数日間は日本に滞在するとのことだった。
マルセルに何かしらの動きがあれば連絡をもらえるように教授に約束を取りつけるとオレは会場に到着したジルと合流し、これまでの経緯を話した。

「私が彼の立場だとしたら、シャルル、確実にあなたを狙いますね。その辺りが腑に落ちません」

やはりジルもオレと同じように何か引っかかている様子だった。
警察が動いている以上、マリナの転落は事件の可能性が高くなった。当初は目撃者もなく事件として処理されたものの後からこうして証言を得られるケースはごく稀だ。時間経過と共に立証が困難になり、結果的に事故のまま処理されてしまうことが多いのが現実だ。
マルセルの目撃情報を元に防犯カメラの映像解析も行われ、事実確認はできたが病院にいたというだけでは残念ながら罪にはならない。
だがマルセルとあの病院に接点があるとは思えない。やはり彼が病院にいたこと自体が不自然なのだ。
結果的にオレは会議を欠席しマルセルが代わりに参加をした。だがあまりにも不確実な方法だ。オレが会議終了後に病院に向かう可能性だってゼロではない。
だとすればジルが言うようにオレを直接狙った方が確実だ。
ではなぜ彼はそうしなかったのか?
オレではなくマリナを狙う理由があるとでも言うのか?

「ジル、マリナの状態に合わせていつでも日本を発つ準備をしておいてくれ」

「シャルル、まさかマリナさんを……?」




つづく