きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

届かぬ想い28

あっ……。
つい口が滑ってしまった。
シャルルは僅かに目を細めるとあたしの中の真実を見極めるかのようにその瞳を鋭く光らせた。
そしてあたしの肩を掴む手に力が入る。

「なぜすぐに言わなかった?!」

責めるかのようなシャルルの言い方にあたしは悔しくてスカートの裾をぎゅっと握った。
なぜ言わないのかって……?!
この言葉が頭の中で何度も何度も繰り返し再生され、あたしの傷をえぐっていく。どうしてあたしが責められなきゃいけないの?
言いづらくさせてるのは誰よっ!

「なぜ言わなかったかって?
じゃ、何て言えば良かったのよっっ!あたしを階段から突き落としたのはあんたの婚約者よって?そんな話、あんたは信じられる?!」

その瞬間シャルルはフッと笑みを浮かべた。やっぱり話したって信じてくれないじゃない。だから言わずにいようと思ったのよ。でももしかしてシャルルなら……そんな期待をしたあたしがバカだったわ。

「もういいっ!あたし日本に帰る。だいたい、あんたがいつまでもお屋敷の中で日本語なんて使わせているから彼女が嫉妬したりするのよ。
あたしが何をしたっていうのよ。
あんたも本当に彼女のことが大切ならもっと言葉や態度にしないと伝わるものも伝わらないわよ!
そもそもパリに来ないかって言ったのはあんたなんだから帰りの飛行機代ぐらい出してもらうわよ。あたしお金なんて持ってきてないし、このままじゃ帰るに帰れないわ」

涙が出るのを必死に堪えながらあたしは自分の思いをシャルルにぶつけた。
今すぐにでもこの場から消えてしまいたい気持ちでいっぱいだった。
目だって半分は見える。
だから治してもらえなくてもいい。
このままここでシャルルと彼女が一緒にいる所を見ていられるほど、あたしの心に広くない。

「日本へのチケットは用意しない。もうそんな必……」

何ですって?
勝手に帰れって言うの?!

「あんたって最低!いいわジルに頼むからっ!」

シャルルはフッと小さくため息を漏らす。

「それは無理だよ、マリナ。
ジルはオレの意に反することはしない。オレは……」

そこで一旦言葉を切ると青灰色の瞳をきらりと光らせた。それは何かを決意したような光に見えてあたしは息を飲んだ。

「何があってももう君を日本に帰すつもりはない」

え?
シャルルはそう言うと振り払ったあたしの手を掴み、ぐっと引き寄せるとその胸にあたしを強く抱き寄せた。

「人の話は最後まで聞くものだ。しかしこのタイミングで記憶が戻るとはさすがはマリナだ。これで何もかも終わりにできる」

ど、どういうことっ?!
シャルルの香りがあたしを包み込む。ものすごい力にあたしはどうしたってシャルルの腕から抜け出すことができない。
シャルルの逞しい胸があたしの頬にいやってほど密着してシャルルの心臓の鼓動が伝わってくる。

「もう自分の想いに目を背けずにいられる」


つづく