きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

届かぬ想い40

シャルルに抱きすくめられ、何も考えられないほどにシャルルを感じた。
長い間、彼女を連想させてきたあの香りさえも愛しく、今はふわりとあたしの鼻孔をくすぐるようだった。
シャルルのシャツの首元に鼻をすりすりと擦り寄せ、あたしはそれを堪能した。

「マリナ……」

両手であたしを引き剥がすように離れていく体とは反対にシャルルの青灰色の瞳があたしを熱く見つめる。

「オレも君を感じたい」

その艶やかな囁きにシャルルが欲情しているのはすぐにわかった。
シャルルはあたしのすりすりを求愛行動だと勘違いしたんだわ。
焦ったあたしは慌てて首を振った。

「あっ……、いや、これは、あんたの香りに吸い寄せられたっていうか、えっといい香りだなって思って」

するとシャルルは熱く潤んだ瞳であたしを覗きこんだ。

「オレの香りを心地良く感じるのは君が遺伝子レベルでオレを求めている証拠だよ。人は遺伝子レベルが遠いほど強い子孫を残せると本能的に感じ取り、遺伝子を嗅ぎ分ける。だから好きな相手の香りを好む傾向がある」

いつもの小難しいシャルルのうんちくも、うっとりするほど甘く囁かれてしまえば目を逸らすこともできない。

「あ、いやそうじゃな……」
「オレはすぐにでも君がほしい」

あたしの言葉に被せるように言うとシャルルはじっとあたしを見つめる。

「マリナ、君を愛したい」

その言葉には拒むことができないほどの力が込められていてあたしは戸惑いながらも静かに頷いた。
シャルルの手があたしの頬に触れ、優しく包み込むようにキスを落とした。
愛を注ぐように、そして次第に情熱的なキスへと変わっていく。
とろけるような甘いキスに夢中になるうちにシャルルの腕がさっと動き、気づけばあたしはソファの背に押し付けれる格好になっていた。
熱い吐息はあたしの首筋を這うようにゆっくりと官能の扉を開いていく。
とその時、ドアをノックする音が静かな部屋に響いた。
シャルルは気にすることもなく、再びあたしにキスをしようとした。

「待って、シャルル。誰か来たわよ」

「待たせておけばいい。こちらから開けない限りは開きはしないよ」

誰かがドアの向こうにいるのに?!

「そういうことじゃな……」

プルップルッ……。
その時あたしの言葉をかき消すようにシャルルの携帯が鳴り出した。
取り出したスマホの画面を見てシャルルがつぶやく。

「ジルか……」

でも呼び出し音は三回鳴っただけですぐに切れてしまった。

「ジルったら意外とせっかちなのね」

あたしはちょっと笑ってそう言った。
だってそんなにすぐに出られるとは限らないもの普通は十回コールは待つわよ。

「いや、ジルは察してすぐに切ったんだ。オレが君といることは知っているはずだ。しかし部屋を訪ねても返事はない。そこで電話をかけてきたんだ。そしたら部屋の中から携帯が鳴った。つまりオレが出られない状況にあるのがわかったんだろう」

出られない状況って……。




つづく