きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

夢の果てに 6

「そうだよ」 あたしは気まずさから明るく答えた。まだドキドキしてる。佟弥の恋愛対象は女の人じゃないって聞いてたからあたしも男の人として見ていなかったから余計にびっくりした。でもこのドキドキは好きとかそういう感情ではない。誰だって男の人とあん…

夢の果てに 5

家に帰ったあたしは改めて佟弥にお礼を言った。そして赤いリボンを付けたプレゼントをバックから出した。 「はい、これ」 佟弥は驚いた顔した。 「いいのか?」 あたしは頷くと佟弥の手を取ってそれを乗せた。 「今日みたいに寒い中、待たせるのも悪いし」 …

夢の果てに 4

「返して」 駆け寄ったあたしは佟弥から下書きの絵を奪い取り、胸に抱えた。 なかなかプロットが思い浮かばず、困り果てたあたしは先にメインキャラになる二人の設定から描くことにしたの。軸になるキャラはしっかりと描いて、作風を見てもらおうと正面と横…

夢の果てに 3

翌日、佟弥は朝からどこかへ出かけて行った。あたしはこたつでゴロンとしながら、突然始まってしまった佟弥との共同生活に不安を感じながらも、うとうとしていた。さすがに男の人が同じ部屋にいたからか昨夜は眠りが浅かったみたい。 するとキッチン横にある…

夢の果てに 2

どうにかして逃げなきゃ。こんな訳わからない男に好きにされるなんて絶対にいや!でも力じゃだめだわ。今はとにかくこの男の言う通りにして隙をみて逃げ出そう。あたしはコクコクと首を縦に振って静かにするという意思表示をした。 「手荒な真似してごめん。…

夢の果てに 1

出版社の正面玄関を出ると、どんよりとした雲が空を覆い尽くすように広がっていた。振り返って見上げたビルはあたしを拒絶するかのように冷たくそびえ立っていた。先日、読み切り掲載枠の仕事を何とか取りつけたものの人気投票の結果はダントツの最下位。 「…

あとがき

みなさま、こんにちは! 最後までお付き合い下さりありがとうございました。みなさまからの拍手を励みに今回は停滞することなく、無事に完結を迎えることができました。こんなに順調に書けたのは何年ぶりだろう 今回の話は記憶を失くしたマリナちゃんにどう…

愛は記憶の彼方へ 14

静かにドアが閉まり、完全に和矢の姿は見えなくなった。あたしはただぼんやりとその様子を見ていた。もっと責められると思っていた。でも和矢は自分のことよりもあたしのことを一番に考えて、恨みごと一つ言わずに行ってしまった。シャルルとの話を聞いた時…

愛は記憶の彼方へ 13

「口当たりが良いから俺、いくらでも飲めそうだ」 グラスに残ったシャンパンを和矢は一気に煽った。 「ブリュット・アンペリオールの84年は特に泡のキメの細やかさと洋梨と花の上品な香りがバランス良く、人気なんだ」 「そういうのはよくわかんないけど、さ…

愛は記憶の彼方へ 12

「どうして?」 息が止まるかと思った。 「このすぐ下が医務室の隣の部屋なんだ」 あたしは状況が掴めずに混乱した。 「うそ……」 この場でお屋敷の図面を広げて見せてほしいぐらい驚いた。 「ほら、向こうに階段があるだろう?あそこから行き来できるように…

愛は記憶の彼方へ 11

医務室って言うぐらいだからあたしは保健室のすごいやつかと思ってたんだけど、医療用の機械が置かれている以外は普通の部屋とあまり変わりなかった。 「オレは隣の部屋にいる。何かあったらこのボタンを押すんだよ。そしたらすぐ来るから」 シャルルに手渡…

愛は記憶の彼方へ 10

「 そろそろ夕食にするか。マリナ、起きれるか?」 「うん」 あたしは体を起こして一旦ベットに座り、それから揃えて置かれていた靴に足を入れた。そして立ち上がり、呼吸をわざと早くした。次に胸の辺りをぎゅっと掴んで前屈みになって俯いた。 「どうした…

愛は記憶の彼方へ 9

二人がベットに近づいて来る気配を感じてあたしはそっと目を開けた。寝たふりなんてしてたらすぐにシャルルに見抜かれそうだわ。 「目が覚めたようだね。どこか痛む?」 さっきまでの激しい言い争いを感じさせない優しいシャルルの瞳にあたしは胸が詰まる思…

愛は記憶の彼方へ 8

話し声で目が覚めた。どうやら向こうの方で誰かが話しているみたいだわ。頭が痛くなってそのままあたし、意識がなくなっちゃったんだ。ベットに寝てるってことは誰かが運んでくれたんだ。隣の部屋かしら? 「さっきも過換気発作を起こしたばかりだから、念の…

愛は記憶の彼方へ 7

あたしの言葉に男の人は息を飲んだ。 「では、オレが誰かわかるか?」 躊躇いながらあたしは首を横に振った。すると男の人は小さく頷くと、 「そうか。オレはシャルル・ドゥ・アルディ。君の、いや……」 彼はそこで一度言葉を飲み、そして再び続けた。 「君た…

愛は記憶の彼方へ 6

辺りを気にしながら中庭に沿ってぐるりと廊下を歩いて行くとスーツ姿の男の人が二人、ある部屋の前に立っていた。耳にイヤホンを入れている感じからして警備員なのかもしれない。 その部屋は重厚な扉で他の部屋とは少し雰囲気が違っていた。特別な部屋のよう…

愛は記憶の彼方へ 5

行ってみたいとは思ったけどあたしはすぐに「うん」とは言えなかった。彼には何か迷いがあるように見えたし、きっとそこは海外なんだと思う。お金のこともあるし。 「でも、あたしパスポートを持っているのかもわからないし、飛行機代とか宿泊代とか、その………

愛は記憶の彼方へ 4

日中は窓から見える景色を見ながらスケッチをして過ごすことが増えた。 「あら、とても上手ね。私なんて絵心が全然ないから立体的に物を描ける人って尊敬しちゃうわ」 昼食の片付けに来てくれた看護師さんがあたしのスケッチを見てそう言った。彼女はこのフ…

愛は記憶の彼方へ 3

白い天井がぼんやりと見えた。 「マリナ?」 必死な顔の男の人が目の前にいる。黒い瞳が揺らいでいて吸い込まれてしまいそうな綺麗な瞳の人。顔を横に向けて辺りを見ればカーテンで囲われたベットにあたしは寝ているようだった。ここは病院?でも、どうして…

愛は記憶の彼方へ 2

「絵梨花、勝手に窓から入って来るなっていつも言ってるだろ?」 いつも?この絵梨花って女は和矢の何? 「だってこっちの方が早いし、玄関に回るのは面倒なんだもん」 絵梨花はそういうと自分が入ってきた窓を振り返った。その視線の先には開け放たれた隣家…

愛は記憶の彼方へ 1

夏の気配を残す秋の風はじっとりとしていて少し汗ばむくらいだった。 駅までは歩いて数十分。手をかざして見上げた空には眩しいほどの太陽がぎらぎらしていた。今日は和矢の夏休み最後の週末。後期の授業が始まればまた忙しくなるからと家に遊びに行くことに…

ひと夏の想い 後編

「マリナ様、あちらを見てください」 突然の轟音に慌てて窓辺に駆け寄ったサマリーは勢いよくカーテンを開けると声を上げた。 「何、どうしたの?!」 あたしも慌てて外を見れば南庭園の向こうに白色の機体に青色のラインの入ったヘリコプターがまさに着陸し…

ひと夏の想い 前編

「この辺りでいかがでしょうか?」 「そうね、ここなら庭木も邪魔にならないし、絶景ポイントかも!」 今日は革命記念日。市内は朝から盛大な催し物が目白押し。中でもパリの象徴でもあるエッフェル塔から打ち上げられる幾千もの花火は壮大らしく、あたしは…

お知らせ(限定公開記事のパスワード申請方法について)

まずはみなさま、こんばんは! 新作「ひと夏の想い」書き始めました(*^o^*) ブログをお休みしていましたが、ようやく始動しました。 まだまだ最初の数行しか書いてはいませんが、生存確認も含めてのお知らせです。 今回はリクエストからのお話になるのである…

あとがき

みなさま、こんばんは! 最後までお付き合い下さり、ありがとうございました😊 パッサカリアは2020年7月に訪問者10000人を達成した時にM様より頂いたリクエストでした。内容はルパートも幸せにしてほしい✨でした。彼が苦境に立った際にシャルマリに助けられる…

愛は導かれてパッサカリア19(最終話)

玄関ホールで足を止め、ドアの向こうで苛立っているであろう男へと電話を掛けた。「用件は何だ?」 「わかっているんだろう?」 「いや、わからないな」 はぐらかすように答えると電話の向こうからため息が聞こえてきた。 「あまり時間がない。いいから開け…

愛は導かれてパッサカリア 18

今日はマリナを連れてマンションの内見に行く予定だ。そろそろ呼んでおいたハイヤーが来る頃だが、マリナがなかなか部屋から出てこない。それほど準備に時間をかけるタイプではないはずなんだが、久々の外出に浮かれて、着ていく服でも悩んでいるのか。たし…

愛は導かれてパッサカリア 17

「ねぇ、明日もどこかに行くの?」 ここ連日オレが一人で出かけていたせいでマリナには寂しい思いをさせてしまってたようだ。 「いや、明日は君も一緒に行こう。見せたい物があるんだ」 「見せたい物って?」 ショコラをパクリと口に放り込んでマリナがこち…

愛は導かれてパッサカリア 16

翌日、ルパートの真意を確かめるため、オレは別邸へと向かった。マリナと再会したあの日も、オレはルパートの気持ちを探るべく別邸を訪れた。ルパートはオレが来ることまで読んでいたのだろう。 「シャルル御坊ちゃ……御当主様、いかがされましたか?」 サー…

愛は導かれてパッサカリア 15

ルパートが別邸に帰宅したのはそれから間もなくのことだった。やはり家を空けていたのはオレを意識してのことだったのは明白だ。 「マルセルも任を解かれて明日、日本へ帰るそうだよ」 「もうスーパーの警備の仕事じゃなくてSUPの仕事に復帰するのよね。梶さ…