きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

届かぬ想い16

二人の刑事はマルセルの両側に立つと有無を言わさぬといった様子でマルセルに同意を求めた。

「私が何か?」

マルセルは自分の身に何が起きているのか分からない様子だ。

「あなたを慶西総合病院で見かけたという情報が入りまして」

すかさず年配の刑事が含みのある言い方をした。
慶西総合病院はマリナのいる病院だ。会議に参加する教授と共に日本に来たはずのマルセルがなぜあの病院にいたんだ?

「それの何がいけないんだ?
任意同行か?それならば強制力はないはずだ。私に何の容疑がかけられているのか知らないが話を聞きたいのならまず説明するのが先だろう」

マルセルは先ほどまでの気弱そうな態度を一変させ、反論し始めた。シンポジウムに名を連ねるだけの人物だ。さすがに弁がたつ。普通の人間ならば警察に同行を求められれば自らの嫌疑を避けるためにも応じるはずだ。

「いえ任意同行ではなく、あくまでも事情聴取です。当然拒否することもできますが、そうまでして拒否するのであればこちらとしても聞かれて困るようなことがあるのかと疑いたくもなりますね」

若手の刑事はわざと挑発的な口調でマルセルを煽る。

「おい、どういう意味だっ!?」

その言い方にマルセルは憤慨し、若手の刑事の肩をドンと小突いた。
瞬間、その刑事はマルセルの腕を素早く捻じり上げて動きを封じた。

「マルセル・ベルラン、公務執行 妨害で緊急逮捕するっ!」

「やめておけ!」

年配の刑事が制するように若手の刑事の肩に手を乗せた。
若手の刑事は小さく舌打ちするとマルセルを捻じり上げていた腕を悔しそうに離した。
年配の刑事はマルセルに向き直ると柔らかい物腰で話し始めた。

「公務執行 妨害で逮捕となれば最長で二十日間の勾留後、検察官によって起訴、不起訴が決定します。マルセルさんこの後のご予定もあることでしょう。
我々は署の方で少しお話を聞かせてもらいたいだけです。何もないのであればすぐに済みますのでどうかご協力をお願いします」

刑事たちはまるで光と陰のようにそれぞれの役回りを演じている。若手が揺さぶりを掛け、それを年配の刑事が落とすといった手法だ。
マルセルはまんまと彼らの罠に掛かったのだ。対象者が手を出さないまでも暴言を吐かさせ、最低でも強迫による執行 妨害で逮捕するという形に持ち込むつもりだったのだろう。
警察も任意同行を求めるまでの確証を得ていないため、こういった聴取という形を取らざるを得なかったのだ。
マルセルは諦めた表情を見せ、彼らと共に部屋をあとにした。

病院でマルセルを見かけたというその情報はどんなものだったのか。単に見かけただけなら警察もここまで強引に押しかけては来ないだろう。マルセルと限定するに至る何があったのか。
だが会議を傍聴しようとしていた彼がなぜ病院に行っていたのだろうか。

「教授、マルセルはずっとあなたと一緒にいたのではないのですか?」

オレが尋ねると教授は手を顎にあててその時の様子を思い出すように答えた。

「いや、この会場に来るまでは一緒だったが私が準備をしている間、マルセルとは別行動だった」

マルセルには空白の時間が存在するという事か。


つづく

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みなさん、こんにちは!
警 察 絡みのお話はあくまでも私の想像の中での事なので実際のものとは異なります。フィクションですのでどうぞ軽く読んで下さい(^_^)a