きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

君と蒼い月を 9

シャルルに送ってもらって、何とか和矢の帰宅前に家に着いた。来週、都内で行われる再生医療に関する研究の講師を務めるために来日したらしい。それまでは大学の研究室で何やらするらしいけど、基本的に午前中は空いていると言っていた。 そしてあたしは現実…

君と蒼い月を 8

「シャル……ル?」 サラリとした白金色の髪、青灰色の瞳、何よりその美貌は紛れもなくシャルルなんだけど、なぜここに? 「お、折れるっ!」 七瀬は額に脂汗を滲ませ、捻られた腕を庇うように押さえている。 「彼女に二度と近づかないと約束しろ」 「わかった…

君と蒼い月を 7

今日は朝から雨が降っていた。バイトが休みでよかったと思いながらのんびり過ごしていると、テーブルの上に置いたままの携帯がブルブルっと振動した。また関係のない何かの通知かな。起き上がるのが億劫でそのまま放置していると、なかなか鳴り止まない。ん…

君と蒼い月を 6

店長に話をしてからの平日は、3時にもなると元々の客数が少ないせいもあって、さっと帰れるようになった。 ただ、週末はそうもいかない。あたしの帰る21時は、汚れた食器は山のようにあるし、新規のお客さんのオーダーは途切れることなく来るし、明日の準備…

君と蒼い月を 5

今回は和矢との大人のシーンを匂わせる場面があります。直接的な描き方はしていませんが、読み進める際はご自身の判断でお願いします。私の作品の中で和矢との絡みは初です…シャルル以外とは無理!と言う方はご注意下さい。 *** 和矢の言葉に茫然とした。…

君と蒼い月を 4

翌日、あたしが起きると和矢の姿はもうなかった。昨夜は会話もないまま、互いに背中を向けて眠った。寂しさと悔しさであたしは毛布の端を握りしめて眠った。今日はバイトは休み。午前中のうちにスーパーに行って材料を買い込み、和矢が早く帰ってきてもいい…

君と蒼い月を 3

あたしは15時までの仕事で、主に野菜を切ったりする仕込みと、皿洗いが中心だった。慣れない作業に、終わる頃にはもうクタクタだった。それでも帰ったら夕食を作らなきゃいけないし、洗濯物だってしまわなきゃいけない。想像していた以上に疲れる。それを思…

君と蒼い月を 2

夕飯には冷蔵庫にあった野菜と少しの豚肉で中華丼と卵スープを作った。家賃も含めて生活費はすべて和矢が出してくれていた。それこそ編集部に行く交通費や原稿用紙代までも。さすがにそのぐらいは自分で出さなきゃと思ってバイトを始めようと思った。和矢は…

君と蒼い月を 1

「すいません。時間なので上がってもいいですか?」 店長は時計をチラッと見ると無表情のままで言った。 「ゴミぐらい捨ててって」 「はい」 あたしは急いで厨房内のごみ箱を交換してごみ庫に捨てに行った。鉄扉を開けると外はムワッと纏わりつくような暑さ…

新年のご挨拶

みなさま、遅くなりましたが明けましておめでとうございます。いかがお過ごしでしょうか。私は長い間、更新もせず、潜っていました。以前どこかでお知らせしたかと思いますが職場が代わり、バタついておりました。いわゆる異動ですが、やっと一息つくことが…

あとがき

みなさん、こんにちは。 「いつかの君を忘れない」いかがだったでしょうか?というか、最後の最後に27話って!28話じゃん…今、気がつきました。 中盤で更新ペースが落ちましたが、近年では稀な(そこまで?!)ハイペースで書けた作品だったんじゃないかな…と…

いつかの君を忘れない 28最終話

車の窓から建物が見えてきた。オレはシートから体を起こし、それを見上げた。外観は悪くない。 「今年の夏にオープンしたばかりで、すごい人気らしいですね。海外からもお忍びで泊まりに来る方も多いとか。お客さんも有名なモデルさんか何かですか?」 「………

いつかの君を忘れない 27

フラッシュバックは疑似体験だ。 映像として再現される場合もあれば、その時の恐怖心が蘇る場合もある。オレはマリナの体を強く抱きしめた。 「大丈夫だ。落ち着いて」 するとマリナは首を左右に振った。 「ちがうの。ごめんね、シャルル。ずっと辛かったよ…

いつかの君を忘れない 26

マリナとの訓練も何とか終え、いよいよ明日は日本へ発つ。なかなか上達しないマリナに根気よく付き合い、これなら何とかなるだろうという段階まで何度も練習した。マリナ自身に不安が残ったままでは意味がないからだ。万全の状態で日本に行くと決めていた。 …

いつかの君を忘れない 25

屋敷までの帰り道、これからの事を二人で話した。すぐに結婚をするわけではないが、一度日本へ行き、マリナの両親と話をしなければならない。結婚を認めてもらえるまでパリには戻らない覚悟でオレは日本へ行くつもりだ。 「あたしも一緒に行くわよ」 「君を…

いつかの君を忘れない 24

マリナは退行催眠のことを言っているのか。言いたいことはわかるがミシェルの場合、この方法は使えない。 「退行催眠の中にインナーチャイルド療法というものはたしかに存在するが、それは患者の幼少期のトラウマなどにアクセスし、当時の心の痛みを癒し、現…

いつかの君を忘れない 23

あの日から五ヶ月。 オレにとってマリナが一番大切なんだと彼女に伝えてから穏やかな日々が続いた。 「シャルル、これどうかな?」 「いいんじゃないか?」 「ねぇ、適当に言ってない?!」 「マリナは何でも似合うよ」 一日時間が取れたから今日はマリナを…

いつかの君を忘れない 22

「マリナ?」 「どうして送るなんて言うのよ」 再会以来、マリナがこんな風に気持ちをぶつけてくるのは初めてだ。どこか他人行儀で、距離を感じていたが仕方がないと割り切っていた。でも今のマリナは本来の彼女に近い。 「一人で帰らせたくないからだよ」 …

いつかの君を忘れない 21

「荒んでいるな」 テーブルの上にチラッと目をやるとルパートは白い封筒をオレに差し出した。 「何だ?」 「ラグノス達が騒ぎ出してる」 ラグノスというのはルパートの兄。つまりオレの叔父で親族会副議長だ。封筒の中には数枚の写真。取り出した瞬間、ルパ…

いつかの君を忘れない 20

「どうして辞めたいだなんて」 ジルは驚きを隠せない様子だった。 「怪我が理由とは言っていた」 「やはり後遺症が?」 「いや、おそらく残らないはずだ。リハビリの様子を聞いた限りではな」 「それで何と答えたのですか?」 「本人の意志を尊重した。理由…

いつかの君を忘れない 19

この一週間、オレは時間を作ってはマリナを連れて出かけた。マリナの記憶の小箱をオレは諦めきれなかった。ルーブル、シャンボール、そしてオルレアンにまで足を伸ばした。それでもマリナには何の変化もなかった。帰りの車の中でマリナがぽそりと言った。 「…

いつかの君を忘れない 18

三時間ほど仮眠を取り、この日はマリナを連れてアンボワーズヘ向かった。 城を見上げたマリナは初めて訪れた場所を見るような目で感嘆していた。 「素敵なお城ね!」 パリに来てから初めての外出に浮かれるマリナに反してオレは複雑な思いでいた。君は何も覚…

活動9周年を迎えました

みなさん、こんにちは🌼 8月17日でブログを始めて9年になりました。今年が10年目かな?たぶん…(笑)いつもご訪問下さりありがとうございます!これも全てみなさまのおかげです❤️正直ここまで長くやるとは思っていなかったのですが、シャルル愛が止まらないこと…

いつかの君を忘れない 17

一週間後、オレは二人を連れてパリへ戻った。マルクは屋敷内で英雄さながらの歓迎を受けた。その日は使用人達の間でもマルクの奇跡の生還にまつわる話で持ちきりだった。一方、マリナにはどう接するべきなのかと使用人達も戸惑いの色を隠せないようだった。…

いつかの君を忘れない 16

マリナの病室へ戻る前にマルクを担当している医師の元へ行き、オレはカルテを確認させてもらった。 炎症による腫脹は抗生剤のおかげで治まってきている。骨癒合まではあと二週間といったところか。若い分、癒合はもう少し早いかもしれないな。腹部エコーから…

いつかの君を忘れない 15

マリナの父親は念のため五日間、入院することになった。母親と話した結果、父親の退院に合わせてマリナも連れて三人で帰国したいと言われた。見知らぬ国で家族が次々と入院となる事態に母親は抱えきれない不安を抱いたのだろう。 「シャルルさんにはお世話に…

いつかの君を忘れない 14

翌日、血液検査の結果を受けて、マリナの腕に入れてあるサーフローを抜くために病室へ向かった。 国際医師免許を持つオレはマリナの担当を任せてもらえるように病院側にはすでに話を通した。 「調子はどうだい?」 ベットに座ってテレビを見ていたマリナが不…

いつかの君を忘れない 13

マリナを病室まで送り、回診に来た医師と入れ替わる形で病室を出た。もちろん検査結果次第で点滴治療を早めに切り上げる提案も担当医師にはした。 「貴院の方針に口出しするのは本意ではないが、彼女の苦痛を少しでも軽減させたいと考えている」 「いえ、私…

いつかの君を忘れない 12

マルクは二週間ほど入院した後にパリへ連れ帰るとして、問題はマリナだ。 午後の便でマリナの両親がこの病院へ来る。両親へは昨日のうちに連絡をした。マリナを無事に見つけたと伝えると父親は隠しはしていたが、感極まって静かに男泣きをしているのがわかっ…

いつかの君を忘れない 11

数ある無人島の一つだけに、何が生息しているかまではさすがに把握していない。万が一、獣の類だった場合、どうするか?ここはココヤシの葉で作ったとても簡易的なものだ。獣に襲われたらひとたまりもないだろう。二人を守りながらでは厳しいかもしれない。…