きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

愛のかけらを掴むまで 11

翌日、あたしはシャルルと一緒にオルレアンに行くことになった。多くの時間を共に過ごすことが、あたしとの記憶の糸口になるとシャルルは考えたんだ。あたしもシャルルが早く思い出せるように精一杯頑張ろうと思った。アデリーヌの住むお屋敷に着いたのはお…

愛のかけらを掴むまで 10

「オレはなぜ一人で逃げずに君を連れて……」 あたしに聞いているというより、自分に問いかけているようだった。あたしを連れて行くことになった理由は覚えてないんだ。 「マリナ、君は一体……」 この呟きがあたしにはシャルルが救ってくれと言っているように聞…

愛のかけらを掴むまで 9

シャルルはフェリックスの肩を掴んであたしから引き離すと、あたしを自分の方へと引き寄せた。 「大丈夫か?」 あたしは頷いた。フェリックスは気まずい様子で俯いたままだった。 「フェリックス、ちょっといいかしら?」 後から来たジルがあたし達の様子を…

愛のかけらを掴むまで 8

ぼんやりとバラの花を眺めているとドアが開く音がした。振り返るとそこには息を切らしたフェリックスがいた。 「ここにいたのか。シャルル様にマリナの所へ行けって言われたけどどうなってる?」 「すっかり誤解されてるみたいね。シャルルに電話で呼ばれた…

愛のかけらを掴むまで 7

「どうして全部話さなかったんだ?」 「仕方ないでしょ。怖いんだもん」 フェリックスは呆れたと言わんばかりの顔をした。 「チャンスだとは思わなかったの?」 「シャルルって呼んでいいって言われただけで今日は十分よ」 「泣いたくせに?」 部屋に戻って…

愛のかけらを掴むまで 6

あたしはその手紙を握りしめて、隣のフェリックスの部屋に走った。 ほんの数行のものだけど、なんと全部フランス語。日本語で書きなさいよ、と思いながらここに来てから初めてのシャルルからあたしへの絡みに嬉しくなった。 「フェリックス!フェリックス!…

愛のかけらを掴むまで 5

透き通るような声はどこまでも冷たく響いた。慌てたようにフェリックスはあたしから離れた。 「あくまでも介抱です」 凛とした言葉に違和感しかなかった。これはさっき言ってたフェリックスの作戦なんだ。あたしはハラハラしながらその様子を見守った。 「オ…

愛のかけらを掴むまで 4

フェリックスと市内に向かい、あれこれ見て回ってある程度の物は買い揃えた。最低限必要な服と下着、それと紙とペン。ここに残ると決めたから。絵を描くことが好きなら気晴らしにするといいと言ってフェリックスは画材店にも立ち寄ってくれた。お屋敷に戻る…

愛のかけらを掴むまで 3

その日、あたしはアルディ家のゲストルームに泊まることになった。ジルの家では日本語を使う習慣がなくて、何かと不便だからという理由からだった。ここなら部屋はいくつもあるし、何より全員が日本語を話すことができる。セキュリティの面でも本家の方が安…

愛のかけらを掴むまで 2

玄関を入ったすぐの所に警備員が二人立っていた。ジルを見るなり「おかえりなさいませ」と声をかけてきた。あたしも何となくお辞儀だけして通りすぎた。前に来た時とは違って呼び止められることもなかった。きっとジルと一緒だから通してくれたんだわ。 「マ…

愛のかけらを掴むまで 1

ぼんやりと窓の外を眺めていた。どこまでも続く白い雲は、まるでふわふわの絨毯のようだった。機内アナウンスが流れる頃には、雲の切れ間から遠くに大地が見えてきた。 胸の鼓動が騒がしく、あたしは落ち着かない気持ちのままシートベルトに手を伸ばした。12…