ふと目を覚ますとすぐ隣でシャルルがあたしを見つめていた。
「おはよう、マリナ」
あたしは贅沢にもシャルルの腕枕でぐっすりと眠っていたらしい。
「おはよう。あんたにしてはずいぶんと早起きね」
時計に目をやるとまだ朝の八時だった。
するとシャルルはサラリと髪を揺らしながらあたしの言葉を否定した。
「隣に君が眠っているのに平気で眠れるわけがないよ。もう何年、オレが君を想ってきたと思うんだ?」
お仕置きとばかりにあたしに覆いかぶさり、キスをする。
二人だけの世界がここにあった。
だれも入り込むことのできない世界。
「君を忘れたことは一日だってなかった」
熱い眼差しであたしを見つめる。その言葉の重みに胸が熱くなった。
でも再会したばかりの頃、シャルルはひどく冷たかったわ。とても再会を喜んでいるようには見えなかったとあたしはふてくされたように言った。
するとシャルルはあたしの両手首を拘束し、少し怒った顔を見せた。
「幸せになれと言ったはずだ」
「え?」
「君と別れることを決めた時、オレは言ったはずだ」
その言葉にあたしはハッとさせられた。
確かに言われた。和矢に宛てて書いた手紙を渡された時にあたしへと向けてシャルルが言った言葉だ。
一生分の夢を見たといい、和矢と幸せにおなりと……。
「あんた、まさか」
咎めるような眼差しでシャルルはあたしを見下ろす。
「君が幸せならそれでいいと思っていた。だが君と共にあるはずの和矢は別の人物と新たな道を歩み始めていたからね」
そういえばシャルルは再会してすぐの時にあたしに幸せかと問いかけた。
それで怒ってたの?!
「バカよ、あんた。そんな昔のことよく覚えていたわね」
あたしは、シャルルの深い愛と優しさに涙が溢れた。
「今度こそ、オレがこの手で君を幸せにする。二度と離しはしない」
その胸にきつく抱きしめられ、あたし達はやっと想いを通わせることができた。
シャルルの香りがふわりと漂い、あたしはそれを深く吸い込んだ。
「君の幸せを願う想いがやっと届いた」
fin