2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧
ー翌日ー 「マリナ、早くおいで」 差し出されるシャルルの手に吸い寄せられるようにあたしは手を伸ばした。 こんなに近くで見るのは初めてだし、想像していたよりもずっと大きい機体を見上げているとタラップを上りかけていたシャルルがあたしを振り返ってそ…
「ここは空港内にあるプライベートジェット利用客用のホテルだよ。 オレが別滑走路の手配をするために空港ロビーに向かったところで君を見つけてここまで運んだんだ。 人集りができ始めていて救急車、救急車って声が聞こえてきたんだ。だけどこの東京国際空…
あたしはシャルルの腕の中で何度も頷いた。あった事を忘れるなんて実際には無理だって分かっていたけど忘れたいと思った。その思いが通じたのかシャルルの腕が解かれあたしは自由になった。 「今すぐにでも君をオレのものにしたいところだが、倒れたばかりの…
「あたしは……」 シャルルの青灰色の瞳が鋭く光り、今回の騒ぎの原因が一体何かを問いただしているように見えたけど、あたしは勇気を振り絞って言葉を続けた。 「あたしはシャルルに会いたくて空港まで来たの。でも間に合わなかった。 そしたらエンジントラブ…
目を覚ますと真っ白な天井が見えた。 ここはどこ? 起き上がろうとしたあたしは左腕に点滴が繋がれているのに気付いて空港で倒れたことを思い出した。 そうだ!シャルルの乗った飛行機がエンジントラブルを起こしたっていうアナウンスを聞いてあたしは急に息…
みなさん、こんにちは! 今回の話は辛いシーンが少しだけあります。みなさんがダメージを受ける可能性があるために最初にお伝えしておこうと思います。 これはかなりショックだと思います。 私が読者だったら痛い。一瞬でもシャルルを失う怖さを見たくない方…
「どうして……?」 日本を発つのは明日の朝だって手紙には書いてあった。それなのにどうしてシャルルは行ってしまったの? 急に仕事が入って帰らなきゃいけなくなったのかもしれない。そうだとすればシャルルのことだからフロントに伝言ぐらい残していくはず…
白い封筒は表面がデコボコとしていてよくよく見てみればバラの花があしらってあった。あたしは息をのみ、綺麗に糊付けされたそれを開けた。中には一枚の手紙と折り鶴が入っていた。 「これっっ…!」 あたしはそれを確かめるように折り鶴を開いてみた。そこに…
黒塗りのハイヤーが車寄せに一台停まっているのが見えて近づいてみるとドアがパッと開き中から運転手さんが声を掛けてきた。 「高瀬様ですか?」 「はい。飯田橋までお願いします」 車はゆっくりとホテルをあとにした。 シャルルの後ろ姿が忘れられない。 ど…
高瀬さんの言葉を聞きながらあたしは自分の心を見つめてみた。 そうして自分と向き合ってみて分かった事があった。あたしはシャルルが女の人と一緒にいた事が辛いわけじゃないかもしれない。 あたしは……あたしとシャルルの間に流れてしまった八年という時の…
「こんな雨の中、何してるんだっ?!」 振り返るとそこには戸惑いと苛立ちの色を纏った黒い瞳があたしを真っ直ぐに見つめていた。 「高瀬さんっ?!」 そうだ……シャルルの事で頭がいっぱいになって高瀬さんに待つように言われていたのも忘れて飛び出して来ち…