きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

届かぬ想い38

「その子?何の話をしている?」

あたしは男らしく認めて責任を取るべきよと諭すように話すと呆れてものも言えないとばかりにシャルルは冷やかな視線をあたしに向けた。

「マリナ、君は何を聞いていたんだ?
そんなことあるはずないだろう。
オレが愛しているのは君だけだと言ったはずだ。
彼女と関係を持ったことは一度もない。第一、彼女と会ったのは数ヶ月も前のエスコートを務めた時と君の記憶が戻ったあの時だけだ」

え?そうなの?
きっぱりとそう言ったシャルルが不機嫌モードに突入してしまう前にあたしは慌てて疑問を投げかけた。

「それならどうして彼女との婚約を避けられなかったの?あんたなら何とでもなりそうだけど」

シャルルは少し考え込み、あたしに話すつもりはなかったと言いながら、埒が明かないと判断したらしくその理由を話してくれた。

「パリに来ないかと君に言った日、オレはその足で教授の元へ向かった。特殊細胞の共同研究を解消してもらうためにね。君の視覚野の再生にはどうしてもあれが必要だったんだ。教授は二つ返事で了承してくれたよ。ただ、条件を出された。それがミレーユとの婚約だった。別の角度から新しい研究を始めるには時間が足りない。再生医療にはタイムリミットがあるんだ。今から新しい研究を始めたのでは遅すぎる。
君と歩んでいける未来を目前に苦渋の選択だった。
だが君に出会うまでのオレはいずれ、アルディに相応しい家柄の心通わぬ誰かと結婚するものだと思っていたし、興味もなかった。そんなオレが君に出会い、一度は結婚を夢を見ることができた。
それならせめてその結婚で君を救いたいと考えたんだ。
君がその事で負い目を感じないように話すつもりはなかった。
あの日、君と共に過ごすことを避けたのもそのせいだ。彼女なら婚約者という立場を利用し、オレたちが共に過ごしたことを理由に君を追い込むぐらいやりかねないからね」

そうだったんだ。
シャルルはあたしを避けていたわけじゃなかったんだ。
だけどあたしのために自分の未来を変えようとしてたなんて……!

「あたしはてっきり彼女の元へ行ったんだと思っていたわ。二人は恋人なんだし、そりゃそうよねって……」

「いや、オレも彼女が日本に来てたのは知らなかった。アルディの名に惹かれ、オレのことを色々と調べさせたのだろう。そして君の存在を知った。
オレが日本に行くことを知った彼女はある人物を君に近づけた」

え?
ある人物って?!
どういうこと?

「誰なのっ?」

その人物が密かにあたしをつけ狙っていたと思うと背すじがぞっとした。



つづく