きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

愛は記憶の彼方へ 12

「どうして?」 息が止まるかと思った。 「このすぐ下が医務室の隣の部屋なんだ」 あたしは状況が掴めずに混乱した。 「うそ……」 この場でお屋敷の図面を広げて見せてほしいぐらい驚いた。 「ほら、向こうに階段があるだろう?あそこから行き来できるように…

愛は記憶の彼方へ 11

医務室って言うぐらいだからあたしは保健室のすごいやつかと思ってたんだけど、医療用の機械が置かれている以外は普通の部屋とあまり変わりなかった。 「オレは隣の部屋にいる。何かあったらこのボタンを押すんだよ。そしたらすぐ来るから」 シャルルに手渡…

愛は記憶の彼方へ 10

「 そろそろ夕食にするか。マリナ、起きれるか?」 「うん」 あたしは体を起こして一旦ベットに座り、それから揃えて置かれていた靴に足を入れた。そして立ち上がり、呼吸をわざと早くした。次に胸の辺りをぎゅっと掴んで前屈みになって俯いた。 「どうした…

愛は記憶の彼方へ 9

二人がベットに近づいて来る気配を感じてあたしはそっと目を開けた。寝たふりなんてしてたらすぐにシャルルに見抜かれそうだわ。 「目が覚めたようだね。どこか痛む?」 さっきまでの激しい言い争いを感じさせない優しいシャルルの瞳にあたしは胸が詰まる思…

愛は記憶の彼方へ 8

話し声で目が覚めた。どうやら向こうの方で誰かが話しているみたいだわ。頭が痛くなってそのままあたし、意識がなくなっちゃったんだ。ベットに寝てるってことは誰かが運んでくれたんだ。隣の部屋かしら? 「さっきも過換気発作を起こしたばかりだから、念の…

愛は記憶の彼方へ 7

あたしの言葉に男の人は息を飲んだ。 「では、オレが誰かわかるか?」 躊躇いながらあたしは首を横に振った。すると男の人は小さく頷くと、 「そうか。オレはシャルル・ドゥ・アルディ。君の、いや……」 彼はそこで一度言葉を飲み、そして再び続けた。 「君た…

愛は記憶の彼方へ 6

辺りを気にしながら中庭に沿ってぐるりと廊下を歩いて行くとスーツ姿の男の人が二人、ある部屋の前に立っていた。耳にイヤホンを入れている感じからして警備員なのかもしれない。 その部屋は重厚な扉で他の部屋とは少し雰囲気が違っていた。特別な部屋のよう…

愛は記憶の彼方へ 5

行ってみたいとは思ったけどあたしはすぐに「うん」とは言えなかった。彼には何か迷いがあるように見えたし、きっとそこは海外なんだと思う。お金のこともあるし。 「でも、あたしパスポートを持っているのかもわからないし、飛行機代とか宿泊代とか、その………

愛は記憶の彼方へ 4

日中は窓から見える景色を見ながらスケッチをして過ごすことが増えた。 「あら、とても上手ね。私なんて絵心が全然ないから立体的に物を描ける人って尊敬しちゃうわ」 昼食の片付けに来てくれた看護師さんがあたしのスケッチを見てそう言った。彼女はこのフ…

愛は記憶の彼方へ 3

白い天井がぼんやりと見えた。 「マリナ?」 必死な顔の男の人が目の前にいる。黒い瞳が揺らいでいて吸い込まれてしまいそうな綺麗な瞳の人。顔を横に向けて辺りを見ればカーテンで囲われたベットにあたしは寝ているようだった。ここは病院?でも、どうして…

愛は記憶の彼方へ 2

「絵梨花、勝手に窓から入って来るなっていつも言ってるだろ?」 いつも?この絵梨花って女は和矢の何? 「だってこっちの方が早いし、玄関に回るのは面倒なんだもん」 絵梨花はそういうと自分が入ってきた窓を振り返った。その視線の先には開け放たれた隣家…

愛は記憶の彼方へ 1

夏の気配を残す秋の風はじっとりとしていて少し汗ばむくらいだった。 駅までは歩いて数十分。手をかざして見上げた空には眩しいほどの太陽がぎらぎらしていた。今日は和矢の夏休み最後の週末。後期の授業が始まればまた忙しくなるからと家に遊びに行くことに…