きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

ひと夏の想い 後編

「マリナ様、あちらを見てください」 


突然の轟音に慌てて窓辺に駆け寄ったサマリーは勢いよくカーテンを開けると声を上げた。


「何、どうしたの?!」


あたしも慌てて外を見れば南庭園の向こうに白色の機体に青色のラインの入ったヘリコプターがまさに着陸しているところだった。
思わずサマリーとあたしは二人で顔を見合わせた。


「もしかしなくてもあれってシャルルのよね?」


「だと思います……」


次第にプロペラの回転が緩やかになり、強風にプラチナブランドの髪を踊らせながらシャルルが颯爽とヘリから降り立つのが見えた。


「マリナ様のためにちゃんと間に合うように帰って来られたんですね」


「それにしてもヘリで帰ってくるなんて」


あたし達は呆気に取られてその様子を見ているとシャルルは乱れた髪をかき上げ、操縦士に向かって片手をあげて何かの合図を送り、機体から離れてお屋敷の方に歩き始めた。
そのスマートな仕草に思わずグッときてしまう。
う……かっこいい。


「あたし、シャルルを迎えに行ってくるわ」


「はい。お二人で花火を楽しんで来てくださいませ」


あたしは急いで玄関に向かった。
階段を駆け降りて行くとちょうどシャルルが帰ってきたところだった。


「おかえり、シャルル。間に合わないかと思ってたけどまさかヘリで帰ってくるなんてあんたすごいわね」


「ただいま、マリナ。花火がもうすぐ始まるから話は向こうでゆっくりしようか」


そうしてあたし達は南庭園へ向かった。
庭園ではエリオットが待っていて、あたし達は用意されたガーデンテーブルに着いた。
プランツモチーフの長椅子と同じ柄のテーブルには数種類の料理やフルーツ、ケーキやプリンなどが並べられていた。


「うわぁ、どれもこれも美味しそう!」


はしゃぐあたしを他所にエリオットは落ち着き払った様子でシャルルを出迎えた。


「おかえりなさいませ、シャルル様」


「君もご苦労だったな」


シャルルはガーデンセットを見渡し、エリオットに労いの言葉をかける。


「いえ……」


返答に困るエリオットの顔には外出したいと言われるよりずっとマシだと書いてあるように見えた。
次の瞬間、辺りにドーンとひときわ大きな花火が打ち上がったのを皮切りに数十発もの花火が夜空を彩る。


「わぁ、綺麗ね……」


この感動を共有したくて隣に座るシャルルの方を見ると、なんと!シャルルは花火じゃなくてあたしをじっと見つめていた。
その青灰色の瞳には色とりどりの花火がきらきらと映りこみ、吸い込まれてしまいそうなほど魅力的だった。


「ちょっと、あたしじゃなくて花火を……見よう……よ」


「オレは喜んでいる君を見ている方がいいんだよ」


その時、あたしはシャルルに愛されているんだと心の底から思った。
市内に行くのはだめだと言われた時はどうして?!って思ったけど、こうしてお庭で見られるようにしてくれたし、何よりヘリまで使ってちゃんと間に合うように帰ってきてくれた。
いつだってあたしを一番に考えてくれているんだってちゃんと態度で示してくれてるんだ。あたしはシャルルの手に自分の手を重ねた。


「シャルル、今日はありがとう」


「君が隣にいてくれるだけでオレは幸せだよ。愛してるよ、マリナ」


その言葉にはあたしへの愛が溢れていた。その時、ふと思った。
これまでも何度となく言われた愛しているという言葉。もちろんあたしもちゃんと愛してるって答えてきた。
でも……まだちゃんと言えてない気がしてきた。


「あのね、シャルル……」


「何だい?」


ふわりと包み込むようにシャルルはあたしを見る。とても緊張するけど今日はちゃんとしたい。
あたしは息をのみ、コトリと首を傾げてシャルルの肩にもたれかかった。


「Je t'aime シャルル」


シャルルが小さく体を震わせたのがわかった。


「マリナ……君、今……」


チラリと様子を伺うように見上げれば食い入るようにあたしを見つめるシャルルの瞳とぶつかった。


「シャルルは日本語でも何語でもわかっちゃうんだろうけど、あんたの生まれた国の言葉でちゃんと言いたくて」


次の瞬間あたしは引き寄せられ、息もできないほど強く抱きしめられた。


「Je t'aime de plus profound de mon corruption……(心の底から愛してる)」


思わず出た、そんな言葉だった。
意味はわからなくてもシャルルの思いが伝わってくる。


「君の言葉、心にすっと入ってきた。オレの人生で最高な瞬間が二つになったよ」


「二つ?もう一つは何?」


「やっぱりシャルルが好き。だ」


去年のクリスマスにあたしが決死の覚悟でパリに来て、シャルルに言った言葉だ。


「幸せすぎて狂いそうだ。今夜は離さないよ」


「え?いや……待って、それは」


「いや、待てないよ」

 


fin

 


***


みなさん、こんばんわ!
お久しぶりです。
2ヶ月ほどお休みしていましたが、充電満タンになったので再開したいと思います✋


今回のお話は読者のスピカ様からの頂いたリクエストでした。
【マリナから母国語のフランス語で“Je t`aime"と言われたらシャルルはとても喜ぶのではないか】というものでした。
みなさま、いかがだったでしょうか?
私は確かに!確かに!でした。
これまで私は一度もマリナにフランス語で言わせたことがなかったかも🤔
目から鱗…でした。
そっか、そんな手があったか(笑)
メールを頂いてビビっと来ました。
素敵なシチュエーションもいくつか頂いたのでその中から私のお好みでチョイスしました。
創作意欲を掻き立てられたというか、久しぶりにワクワクしながら書くことができました。
いつもは自分で考えた罠にどハマり😅なんてこともしばしばなので、サラサラ〜っと書くことができました。
イデア💡をいただくのってワクワクしますね!
次回作はまだ未定です。
どんなお話を書こうかな〜😊
最後になりますが、パスワード申請をして下さった方がいたのですが、メールでの申請をお願いしましたが、まだこちらに届いておりません。
もし心変わりがなければ改めてメールでの申請をぜひして下さいませ✨
やり方など不明点がありましたらTwitterのDMでもこちらのコメントでもいいのでご一報下さい✋


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