きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

いつかの君を忘れない 11

数ある無人島の一つだけに、何が生息しているかまではさすがに把握していない。万が一、獣の類だった場合、どうするか?ここはココヤシの葉で作ったとても簡易的なものだ。獣に襲われたらひとたまりもないだろう。二人を守りながらでは厳しいかもしれない。…

いつかの君を忘れない 10

まさか、マリナは記憶が……。呆然とするオレを見てマルクが言った。 「マリナ様、その方が以前お話しした……」 マルクは一瞬、躊躇し、それから言葉を続けた。 「シャルル様です」 「この人が?ゴホッ……ゴホッ」生きていた。マリナが生きていた。生き延びてく…

いつかの君を忘れない 9

マリナじゃない……! ベットに横たわっていたのは白人の女性だった。先に少年達に特徴を聞くべきだった。マリナだという期待が判断を鈍らせた。 「救助されたのはこの女性だけですか?!」 するとゴルザ医師は頷いた。 「お探しの方ではありませんでしたか」 …

いつかの君を忘れない 8

マリナの両親が帰国した日から、オレはダイバーによる捜索に加えてあの一帯の孤島の捜索を始めた。イタリア半島を囲むリグリア海、アドリア海、ティレニア海、そしてイオニア海にはいくつかの島が存在する。海外からの観光客も多い島は対象から外した。そこ…

いつかの君を忘れない 7

マリナの両親が帰国する日の朝、オレは犠牲者の家族が滞在するサランダ海岸の目の前に立つリゾートホテルへ向かった。彼らがアルバニアへ入国した際、オレは空港へ出向いたが、オレを見るなり関係者専用の迎えのバスに乗り込んで行ってしまった。両親にして…

いつかの君を忘れない 6

事故から7日目、軍による捜索及び、海底に沈む機体の回収作業は打ち切られた。生存者96名の中にマリナの姿はなかった。そして死者、行方不明者は143名。マリナはマルクと共に行方不明者リストにその名を連ねた。緊急本部が置かれたサランダへは会場が閉鎖さ…

いつかの君を忘れない 5

午後八時、日没と共に軍は今日の救助活動を終え、明日早朝からまた再開するとの知らせが来た。 「シャルル、私達も一度戻りましょう」 九時を回った段階でジルから連絡が来た。 「そうだな、君達は戻ってくれ」 夜間飛行は可能とはいえ、ヘリでの捜索は困難…

いつかの君を忘れない 4

「状況は?!」 「着水地点へ救助の船が出ていましたが、報告のあった地点より20キロほど手前で落下したとのことで、救助活動は遅れているそうです」 マリナを乗せたジェットが墜落した。 「ヘリの準備は?!」 「裏庭からすぐにでも飛べます」 「うちのクル…

いつかの君を忘れない 3

シャルルが用意してくれたのはファーストクラスのチケットだった。座席ごとに仕切られていて完全な個室だった。素敵な白いふわふわのスリッパまで付いていた。パリまでは約12時間ほど。夕食をいただいた後、シートをフラットにしてもらってあたしは早々に寝…

いつかの君を忘れない 2

荷物は玄関に置いたバックが一つ、あとはほとんど処分してしまったから最後の夕食はコンビニのおにぎりで済ませた。ガランとなった部屋を見渡した。一人暮らしを始めたのが五年前。たくさんの思い出が蘇ってくる。結局マンガは売れないままだった。だけど、…

いつかの君を忘れない 1

はじめに ⚠️⚠️今回のお話は事故。マリナちゃんの生死にかかわる深刻な内容が一部含まれますマリナちゃんのそういう重い話は苦手という方は辞めた方がいいかもしれません。もちろんシャルルも苦しみます。特に鍵は掛けていませんので、読み進めるにあたっては…

最近のこと(近況について)

みなさん、こんにちはお久しぶりです。少し休んでGWが明けた頃にでも新作をスタートできたらと思っていましたが、気づけばもう6月じゃんっ?!…Σ(゚д゚lll)なのにまだ形にもできていませんいくつかプランはあるけれど決めきれず、あちこちに気が散ってしまう…

愛のかけらを掴むまで 21 最終話

ミカエリス家との取引はフランス東部アルザス地方の中心ストラスブールとドイツのケールという町の間を流れるライン川の近くにある聖ノーストラナス寺院内で行われることになった。昨日、シャルルの部屋で鳴り続けていた電話はどうやらこの件だったらしい。 …

愛のかけらを掴むまで 19

みなさん、こんにちは!今回は20話を限定記事にしました。分断するのが大変なので19話、20話と続けて更新します。 はてなブログの方は限定記事を掲載できないため、お読みになるにはライブドアブログへ行っていただく必要があります。 その際パスワードが必…

愛のかけらを掴むまで 18

あたしの頬に触れていた手が後頭部へと回され、シャルルがゆっくりと頬を傾けてきた。 「ん……っ……」 その言葉通りの情熱的なキスとシャルルから漏れる吐息に溶けそうになる。優しく甘いキスに酔わされていると、名残惜しそうに唇が離れ、シャルルがじっとあ…

愛のかけらを掴むまで 17

パリに戻ってきた頃には辺りはすっかり暗くなっていた。お屋敷に着くとすぐにシャルルは希少庫の鍵を私室の金庫にしまい、ホッとした様子だった。 「これで明後日の取引に間に合わせることができるよ。これもすべて君のおかげだ」 言いながらシャルルはキッ…

愛のかけらを掴むまで 16

「どうして?君達は惹かれ合ってたじゃないか。だからオレは……それなのに、なぜ?!」 シャルルは自分が身を引いたとはあえて言わずに言葉を濁した。あたしの心の負担を考えてくれてるんだ。 「あんたのことが忘れられなくて」 シャルルは信じられないって顔…

愛のかけらを掴むまで 15

それってまさか。あたしはシャルルの腕の中から抜け出し、シャルルを見上げた。そこへ救急隊の人達が駆けつけてきた。 「ケガをしたのはどちらの方ですか?」 一気に緊迫した空気に包まれた。すると救急隊の人にシャルルがフランス語で答えた。 ーー何も問題…

愛のかけらを掴むまで 14

見送られながらあたしは後ろ向きで進んで行くとすぐに格子状の床を感じた。あたしはそれを持ち上げて横においた。覗き込むとちょうど真下にチェストらしきものが見えた。懐中電灯を取り出して部屋の中を照らしてみた。部屋は窓もなくてライトが当たらない隅…

愛のかけらを掴むまで 13

アデリーヌが準備してくれている間にあたしはシャルルから鍵の場所を教わった。「時計のちょうど反対側に仕掛けの歯車がある。その歯車の部分にスライドすれば開く小さな箱が内臓されている。その中に鍵を隠した。真鍮色の古い物だから見ればすぐにわかると…

愛のかけらを掴むまで 12

シャルルは図書室の奥の部屋に鍵を隠したと言っていた。柱時計の仕掛けで出入りできるあの部屋だわ。あたし達はアデリーヌと一緒にそこへ向かった。すると以前とは雰囲気の違うドアに変わっていた。 「ドアを変えたのか?」 「ええ、ずいぶん前に。あなたが…

愛のかけらを掴むまで 11

翌日、あたしはシャルルと一緒にオルレアンに行くことになった。多くの時間を共に過ごすことが、あたしとの記憶の糸口になるとシャルルは考えたんだ。あたしもシャルルが早く思い出せるように精一杯頑張ろうと思った。アデリーヌの住むお屋敷に着いたのはお…

愛のかけらを掴むまで 10

「オレはなぜ一人で逃げずに君を連れて……」 あたしに聞いているというより、自分に問いかけているようだった。あたしを連れて行くことになった理由は覚えてないんだ。 「マリナ、君は一体……」 この呟きがあたしにはシャルルが救ってくれと言っているように聞…

愛のかけらを掴むまで 9

シャルルはフェリックスの肩を掴んであたしから引き離すと、あたしを自分の方へと引き寄せた。 「大丈夫か?」 あたしは頷いた。フェリックスは気まずい様子で俯いたままだった。 「フェリックス、ちょっといいかしら?」 後から来たジルがあたし達の様子を…

愛のかけらを掴むまで 8

ぼんやりとバラの花を眺めているとドアが開く音がした。振り返るとそこには息を切らしたフェリックスがいた。 「ここにいたのか。シャルル様にマリナの所へ行けって言われたけどどうなってる?」 「すっかり誤解されてるみたいね。シャルルに電話で呼ばれた…

愛のかけらを掴むまで 7

「どうして全部話さなかったんだ?」 「仕方ないでしょ。怖いんだもん」 フェリックスは呆れたと言わんばかりの顔をした。 「チャンスだとは思わなかったの?」 「シャルルって呼んでいいって言われただけで今日は十分よ」 「泣いたくせに?」 部屋に戻って…

愛のかけらを掴むまで 6

あたしはその手紙を握りしめて、隣のフェリックスの部屋に走った。 ほんの数行のものだけど、なんと全部フランス語。日本語で書きなさいよ、と思いながらここに来てから初めてのシャルルからあたしへの絡みに嬉しくなった。 「フェリックス!フェリックス!…

愛のかけらを掴むまで 5

透き通るような声はどこまでも冷たく響いた。慌てたようにフェリックスはあたしから離れた。 「あくまでも介抱です」 凛とした言葉に違和感しかなかった。これはさっき言ってたフェリックスの作戦なんだ。あたしはハラハラしながらその様子を見守った。 「オ…

愛のかけらを掴むまで 4

フェリックスと市内に向かい、あれこれ見て回ってある程度の物は買い揃えた。最低限必要な服と下着、それと紙とペン。ここに残ると決めたから。絵を描くことが好きなら気晴らしにするといいと言ってフェリックスは画材店にも立ち寄ってくれた。お屋敷に戻る…

愛のかけらを掴むまで 3

その日、あたしはアルディ家のゲストルームに泊まることになった。ジルの家では日本語を使う習慣がなくて、何かと不便だからという理由からだった。ここなら部屋はいくつもあるし、何より全員が日本語を話すことができる。セキュリティの面でも本家の方が安…