きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

いつかの君を忘れない 1

はじめに


⚠️⚠️
今回のお話は事故。
マリナちゃんの生死にかかわる深刻な内容が一部含まれます😰
マリナちゃんのそういう重い話は苦手という方は辞めた方がいいかもしれません。
もちろんシャルルも苦しみます。
特に鍵は掛けていませんので、読み進めるにあたってはご自身の判断でお願いします。
不快な思いや、悲しみに耐えられる自信のない方はご遠慮下さい。
責任は負いかねますので慎重に読み進めて下さい。
ちなみにこれまでバットエンドは書いたことがありませんので今回もハピエンを目指します。


CPはシャルル🧡マリナ。


それでは、どうぞ👍


***

ゴホッゴホッ……。
むせ返るような咳で目が覚めた。
あれ、窓閉めてなかったっけ?
体を置こしてカーテンを巡ってみたけどちゃんと閉まっていた。
そうよね、さすがに窓を開けて寝たら風邪をひいちゃうって思ってちゃんと閉めたんだったわ。
ゴホッゴホッ……。
台所に行って、水を飲んだら喉の違和感は消えた。
何も掛けずに昼寝をしていたからきっと喉が乾燥してただけかもね。
カタカタカタ……。
振り返るとテムが回し車で懸命に走っていた。
テムはバイト先の美弥さんが実家に行っている間、預かっているゴールデンハムスターの男の子。
ふわふわしていて可愛い。
ひまわりの種を一粒摘んでケージの隙間から差し出すとテムはトコトコと近づいて首を傾げると両手で種を受け取り、もぐもぐと食べた。その愛らしい姿にもう一粒、渡してみる。器用に殻を剥いて頬張る姿が何とも癒される。
畳に寝転んであたしは頬杖をついたまま、しばらくテムを眺めた。
明日のお昼過ぎには美弥さんが帰ってくる。テムを美弥さんに返したら、そのままあたしはシャルルと一緒にパリに行く。
アパートの退居手続きもすでに終わった。
三日前、美弥さんのお父さんが倒れたという知らせを聞いて、あたしは急遽、シャルルに頼んでパリ行きの日程を遅らせてもらった。
美弥さんは実家に帰ったらどれくらいで戻ってこられるかわからないとテムの預け先に困っていた。
そこであたしは最後にお世話になった美弥さんの力になれればとテムを預かると名乗りを上げた。
小菅での別れから三年。
和矢とは一年も経たずにお別れした。
理由はシャルルの事が忘れられなかったからだった。
それでもすぐにはシャルルに連絡を取らなかった。
今さら何て言っていいのかわからなかったからだ。そんなあたしの背中を押してくれたのが美弥さんだった。
美弥さんとはバイトのシフトが同じになる事が多かった。一緒に働くうちにお互いの話をするようになっていた。
次第に美弥さんはシャルルに連絡をしてみたら?と口にするようになっていた。
それでもあたしはずっと首を縦には振らなかった。
シャルルがどんな思いであたしの手を離してくれたのかを思うと言い出せなかった。
だけど「その彼がマリナちゃんの幸せを願って別れを決めたのなら、今のマリナちゃんを見てどう思うかしら?」って美弥さんに言われてあたしはハッとした。
そして決心した。
自分の思いをシャルルに伝えようって。
最初はアルディ家の代表番号に電話をかけてみた。だけどシャルルに繋いでくれることはなかった。


「当家では直接シャルル様にお繋ぎすることは致しておりません。お話は然るべき手続きを取っていただき、面会の順番をお待ち下さい」


「ジルは?ジルでも電話に出てくれないかしら?池田麻里奈って言ってもらえれば出てくれると思うんだけど」


「ジル様は当家にはいらっしゃいませんのでお繋ぎすることはできません」


「だったらあたしから電話があったとシャルルに伝えてもらえませんか?」


「個人的なご用件をお伝えすることは断るように言われておりますので悪しからず」


そういうと電話は無情にも切られた。
それでも何日も掛け続けてみた。
だけどやっぱり同じことの繰り返しだった。
家の電話が鳴り響いたのは、それから二週間ほどたった頃だった。


「何か困ったことでもあったのか?」


懐かしい声に思わず、胸がいっぱいになった。透き通った声は少し震えているようにも聞こえた。
正直、あたしからの電話だとわかってもシャルルは出てくれないんじゃないかと諦めかけていた頃だった。
これがシャルルと話せる最後のチャンスかもしれない。
そう思うと何から話せばいいのか迷った。
和矢と別れたのとか、あの時はごめん……は違う気がした。
言い淀んでいると、受話器の向こうからフランス語でのやり取りが聞こえてきた。
仕事の合間にかけてきてくれてるのかもしれない。


「マリナ?」


息を吸い込み、そしてあたしは自分の思いを口にした。


「会いたい……」

 

 

 


つづく