きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

いつかの君を忘れない 6

 

事故から7日目、軍による捜索及び、海底に沈む機体の回収作業は打ち切られた。
生存者96名の中にマリナの姿はなかった。そして死者、行方不明者は143名。
マリナはマルクと共に行方不明者リストにその名を連ねた。
緊急本部が置かれたサランダへは会場が閉鎖される最終日までオレは足を運ばなかった。
あそこは身元確認を待つ遺体が待っているからだ。
マリナがあの場にいるはずはない。
だが、検視の終わった身元不明の遺体は順に火葬されると聞いて複雑な思いを胸に抱えながらオレは向かった。
この頃にはどんな形でもマリナに繋がるものをオレは求めた。
指先一つでもいい。
そう考えるようになっていた。


日が経つごとに事故当時の様子が明らかになってきた。
エーゲ海上空で第三エンジンから出火、のちにこれが爆発。燃料供給装置であるクロスフィードバルブの一部を損傷し、燃料漏れを引き起こしたため、緊急着水を試みるが流出した燃料から更に引火、高温による主翼の変形から主翼の一部を損失、そして制御不能となり墜落。
アルバニアの南部サランダ上空で消息を絶った。
記録によればイオアニナ空港へ緊急着陸の要請があったが、燃料が持たなかったのだろう。
事故原因は不明。
おそらく整備不良だろうが、真相究明までには時間がかかるだろう。
読み終えた調査報告書を放り投げた。
なぜ、オレはあの便を選んでしまったんだ。


***


部屋のチャイムが何度も鳴っている。
無視していると今度は携帯が鳴り出した。
液晶を見ると予想通りジルだった。
重い腰を上げ、部屋のドアを開けに行く。


「そろそろアルディへ戻って来てくれませんか?」


緊急本部が閉鎖される日、オレはマリナの一部さえも見つけることができなかった。
どれもマリナの特徴に当てはまるものではなかった。


「マリナに繋がるものを見つけたら帰ると言ったはずだ」


事故から10日が経っていたが、オレはダイバーを雇い、海中の捜索を独自に続けていた。


「お気持ちはわかりますが、あの日からすでに10日。マリナさんのご両親も死亡届けを出すとおっしゃっていて……」


「だめだっ!」


死亡届けを出すと言うことはオレ達、残された者がマリナの死を認めたことになる。


「ですが……」


「待つように伝えてくれ。オレはまだ諦めてない。絶対に見つけ出す。だから時間をくれと」


「シャルル……」


ジルは俯き、唇を噛みしめた。
気丈に振る舞ってはいるが、ジルも辛い立場なのはオレもわかっている。


「わかりました。説得してみます。ただし、あと3日で彼らは帰国するそうです」


「わかった」


***


日が沈むと同時に捜索は終了した。
今日も何一つ見つけられなかった。
オレは浜辺に足を運び、澄んだ碧い海を見つめた。
しばらくそうしていると夕陽が沈み始めていた。オレは当て所もなく砂浜を西に向かって歩いた。
そこには観光客の残して行った物なのか、ペットボトルや紙クズ、サンダルがあるだけだった。
ふと、遠くに赤く光る物が見え、オレは駆け出していた。
もしかしてあれはマリナの髪飾りか?!
近くに行くと、それがただのプラスチックの破片だとすぐにわかった。
そうだ、髪飾りだけが流れ着くはずがない。それに、マリナがあの時と同じ物を付けているとも限らない。
オレは何を探しているのか、自分でもわからなくなっていた。


「こんな場所に辿り着くはずがないか……」

 

 


つづく