きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛のかけらを掴むまで 14

見送られながらあたしは後ろ向きで進んで行くとすぐに格子状の床を感じた。あたしはそれを持ち上げて横においた。
覗き込むとちょうど真下にチェストらしきものが見えた。
懐中電灯を取り出して部屋の中を照らしてみた。部屋は窓もなくてライトが当たらない隅の方は真っ暗だった。
よし、あそこに降りればいいのね。
ゆっくりと天井にぶら下がりながらチェスト目掛けてあたしはよいしょと飛び降りた。教えられた通りにあたしは歯車の仕掛けの所まで行った。
懐中電灯を当てるとたしかに歯車が床に埋め込まれていた。その歯車の間に一ヶ所だけ小さな木箱が付いていた。
あたしはそれをスライドさせると中からいかにも古そうな鍵が入っていた。

 

「見つけられた?」

その時、イヤリングからシャルルの声が聞こえてきた。

「うん、あったわ」

「良かった」

シャルルの声は少しホッとした様子だった。

「じゃ、早く戻っておいで」

 

「うん」


プツっと通信が切れた時、ささっと何かが視界の隅で動いたような気がした。
何っ?!
懐中電灯を向けてみたけど、何もない。
すると今度は後ろの方でガサガサっと音がした。
恐る恐る振り返ったけど何もない。
まさかこのお屋敷に住む幽霊とかじゃないわよね?
背筋がゾクっとなった。
何が出ようと、これだけは絶対に落とさないようにと鍵を握りしめ、チェストに乗った。さっき出てきた穴に体を押し上げるように上った。
その時、ヒューっと冷たい風が頬を掠めた。


「ひぇーっ!!」

自分の叫び声が狭い通路の中で反響して耳がキーンとなった。


「どうしたっ?!」


出口の方からシャルルが心配した様子でこっちを見ていた。

やだ、このひんやりとした感じ。
もうあたしの頭の中では白い着物を着た女の人がすぐ後ろから追いかけて来ているんじゃないかって妄想が膨らむばかり。
するとふわりと何かがあたしの足首を撫でたような感触がした。


「ぎゃー!」


パニックになったあたしは出口に向かって突進し、待ち構えていたシャルルの首に必死でしがみついた。


「おいっ!ばかっ……」


次の瞬間、シャルルはバランスを崩して、あたし達は宙に投げ出されてしまった。
ひぇーー落ちる!
咄嗟にぎゅっと目を瞑ると、ガシャンと脚立が倒れるものすごい音がして、その直後にドスっという鈍い衝撃が体に走った。
痛っ……。
と、思ったけど不思議とどこも痛くない。
なぜかって、あたしはシャルルに包まれていたからだった。


「くっ……」


シャルルがあたしの下で呻き声をあげた。
あたしは慌ててシャルルの上から飛び退いた。


「ごめん、大丈夫?!」


だけどシャルルはあたしの問いかけには反応せず、仰向けになったまま、宙を見据えるばかり。
そばにいたアデリーヌも駆けつけてきた。


「頭を打ったのかもしれない。マリー、救急車!」


「は、はい」


アデリーヌに言われてメイドさんが慌てて駆けて出して行った。
シャルルに何かあったらどうしよう。
するとシャルルがあたしの方にゆっくりと顔を向けた。


「マリナ……」


シャルルはあたしの名前を呟くように言うと肩肘をついて体を起こそうとした。


「動かない方がいいわ」


慌ててそれを止めようと近づいた瞬間、シャルルの手がさっと伸びてきて、あたしを攫うように抱き寄せた。


「シャルル……?」


「すまなかった」


あたしは首を振った。
ううん、パニックになったあたしが悪いの。


「シャルルは悪くないわ。あたしの方こそごめん」


「そうじゃなくて、待たせてごめん」

 


つづく