きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

忘れられないもの26

「ここは空港内にあるプライベートジェット利用客用のホテルだよ。
オレが別滑走路の手配をするために空港ロビーに向かったところで君を見つけてここまで運んだんだ。
人集りができ始めていて救急車、救急車って声が聞こえてきたんだ。だけどこの東京国際空港内に救急車は配備されていない。そのため緊急の場合でも患者は敷地外の消防署から来るのを待たなきゃいけないんだ。空港が沖合に移設されてからはさらに遠くなった。当然、空港内にクリニックは設置されているがおそらく時間外で医者は不在だったろう。さすがに急病人を前に放っていくわけにもいかずに近づいてみたら君だったってわけ」


いろんな偶然が重なってあたしはシャルルに会えたんだと知った。
もし飛行機がトラブルを起こさなかったらシャルルの飛行機も予定通りにパリに
向けて飛び立っていたはずだったし、別滑走路の手配をするために空港ロビーに来ることもなかったんだ。

「もう会えないかと思っていた。それなのにシャルルに助けてもらったなんて奇跡みたい」


あたしがそういうとシャルルの凛とした
瞳がひときわ光った。

「オレは奇跡なんて信じない。オレたちが再会したのは必然だったんだ。今こうしているのもマリウスがアルディへ来たのもオレたちが再会するためだったのかと思えるよ」

マリウスってあの時の赤ん坊?
シャルルはあたしが何を言いたいのかわかったみたいで静かに頷いた。

「先日マリウスがオレを訪ねてきたんだ」

そしてシャルルがオルレアンに行ってアデリーヌの手術をしたことを聞いた。

アデリーヌはもう大丈夫なのよね?」

「ああ。転移性のものではなかったから取り除いてしまえば問題はない。そしてアルディに帰る日にあの折り鶴をアデリーヌに渡されたんだ。その時、君がちゃんと幸せでいるのかを確かめておこうと思ったんだ。そのためにオレは小菅で君の手を離したんだからね」

そう、あの時シャルルはあたしが和矢に宛てて書いた手紙と一緒にあたしを自由にしてくれた。一人きりで孤島に行こうとしてくれた。シャルルの愛の深さを改めてあたしは思い知った。
マリウスがあたし達を引き合わせてくれたんだ。シャルルによく似た天使の様な笑顔を思い出していた。
その時あたしはハッとして辺りを見渡した。家を出てくる時に持っていたはずの折り鶴がないことに気付いた。
倒れた時に空港に置いてきちゃったのかもしれない。そう思っていたらシャルルが内ポケットから折り鶴を取り出してあたしに差し出した。

「君はこれを握りしめてたまま倒れていたよ。その時オレは一つの可能性にかけたんだ。君がオレを追って空港に来たのかもしれないってね。だが単に見送りに来ただけかもしれない。淡い期待を抱き、万が一それが違ったとしたらオレはもう耐えられないと思っていた。
だから君の口からオレに会いに来たと聞いた時も手放しには喜べなかった」

シャルルの胸の内を知ってあたしは胸が苦しくなった。そんなにも自分がシャルルを苦しめていたんだと知った。
好きだと言っておきながらあたしは和矢を選んでしまった。
シャルルはあの時の事がトラウマになっていたんだ。

「ごめんね、シャルル。あたしはあんたをひどく傷つけたのね。でももう二度と間違えたりしないわ。あんたの後を追いかけている時に思ったの。あたしはシャルルを愛してる。誰よりも愛してるんだって」

シャルルは食い入るようにあたしを見つめ、まるであたしの言葉を心に刻みつけているかのようだった。
そして一言。

「愛してるよマリナ。もうオレから離れるな。いや、もう離さない……」


つづく


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みなさん、こんにちは!
お待たせしました。あっ…待ってなかったかしら?
更新が遅くなってすいません
もう少しでジェットが飛び立ちます。次回は限定記事になるかと思います。
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