きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

忘れられないもの19

黒塗りのハイヤーが車寄せに一台停まっているのが見えて近づいてみるとドアがパッと開き中から運転手さんが声を掛けてきた。

「高瀬様ですか?」

「はい。飯田橋までお願いします」

車はゆっくりとホテルをあとにした。
シャルルの後ろ姿が忘れられない。
どうしてホテルの入り口にいたの?
誰かを見送ってた?
ううん、シャルルが誰かを見送るなんて思えない。どっちかと言えば見送られる方だもの。だとしたらなんで外にいたんだろう?
まさかあたしが高瀬さんと食事に行くのを知っていた?ううん、それはないはずだわ。だって食事に誘われたのはついさっきの事だもの。
答えの出ない疑問が浮かんでは消えていく。
辺りは見慣れた景色になってきてアパートが近づいているんだと気付いた。
あっ……あたしお金ないっ。
どうしよう。身を乗り出してメーターを見れば結構な金額になっていてあたしは青くなった。

「あの…分割払いとか出来ませんか?」

無理を承知で一か八か聞いてみると

「もう高瀬様にお支払い頂いてるので大丈夫ですよ」

ハイヤーのおじさんはチラッとあたしを見て笑いながらそう言った。
あたしがお金を持っていないのが分かっちゃったみたいで恥ずかしくなった。
でも助かった……。
高瀬さんの心遣いに感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
高瀬さんの気持ちに答える事は出来なかったのにこんなに優しくしてもらってあたしは教室だけはこれからもちゃんと行こうと心に決めた。

「そこの角で止めて下さい」

寂しくなってきた小道の一つ目の角で止めてもらった。

「ここでいいかい?」

「はい。ありがとうございました」

街灯がチカチカと消えかけて一層寂しそうな路地を入るとアパートが見えてきた。今日はいろんな事があって凄く疲れた。階段を上る足は鉛のように重たい。
ゴソゴソとバックからアパートの鍵を取り出した。
ガチャガチャと鍵を回して扉を開けると真っ暗な部屋があたしを迎えてくれた。
電気をパチンとつけて靴を脱ぎ、部屋に上がろうとした時に足元に何かあるのが見えた。
何だろう?ポストに投函されたチラシか何かかな?
よっこらしょと拾いあげるとチラシと一緒に一通の手紙があった。
手にとってひっくり返してみても差出人の名前もあたしの名前も何も書いていない。そしてよくよく見てみるとそこには……。あたしは息をのんだ。


つづく




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みなさん、こんにちわ!
さて、この話もあと少しで最終話を迎えられそうです。なのにここにきてまだ終わらせたくないような、無事に完走できそうでホッとしたような複雑な思いです。延ばそうかな?(笑)