きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

忘れられないもの23

目を覚ますと真っ白な天井が見えた。
ここはどこ?
起き上がろうとしたあたしは左腕に点滴が繋がれているのに気付いて空港で倒れたことを思い出した。
そうだ!シャルルの乗った飛行機がエンジントラブルを起こしたっていうアナウンスを聞いてあたしは急に息苦しくなって意識を失くしたんだ。
そばにいた誰かが助けてくれたんだ。
じゃ、ここは空港の救護室?
その時部屋のドアが開いてあたしは息を飲んだ。


「気分はどう?」


そう言って現れたのは飛行機に乗っているはずのシャルルだった。


「シャ…シャルルっ?!なんでここに?」


シャルルは点滴の残量をチェックするとベットの横に置いてあるイスに座った。


「オレの話をする前に聞かせてくれ。君の身に何があった?」


その表情は硬く、シャルルがあたしとの再会を望んでなかったんじゃないのかって感じた。
小菅であたし達に向けて言ったアデュウという言葉。
フランス語を知らないあたしでもそれがサヨナラを意味する言葉だっていうのは分かっていた。でもそれだけじゃないとあの時和矢は教えてくれた。
アデュウ……。
adieuの語源はaが~の元へ、dieuは神様。つまり神様の元へという告別の言葉でもあって、もう二度と会わないだろうって時に使う永遠の別れの言葉なんだと。
もしもあのまま孤島に移送されていたら二度と会えなくなるのは分かっていた。だからシャルルはあたし達にお別れを言ったんだと。
だけど強制移送が撤回された後もシャルルはあたし達にアデュウと言った。
つまり全てが上手くいって元の生活を取り戻したとしてもあたし達とは二度と会うことはない、会わないって決めていたんじゃないかって。
その事を思うと会いたくて空港まで来たとは言い出せなかった。でもあの手紙をもらった時はそんな事まで考えてなくて夢中で家を飛び出していた。

「マリナ?」

黙ったままのあたしにシャルルは再び声を掛けた。シャルルに会いたくて空港まで追いかけてきたっていう一言が言えずにいた。


「君が倒れていた時は呼吸も浅く、急性過換気症による意識喪失の状態だった。
これは主に過度のストレスから起こるものだ。なぜ空港にいた?何が君にあったのか知りたい」


それじゃ、あの時助けてくれたのはシャルルだったの?
その時、もう二度と会えないならシャルルになんて思われてもいい、自分の気持ちをちゃんと伝えようと思った気持ちを思い出した。
あたしは自分の気持ちをちゃんと伝えるために体をゆっくりと起こして大きく息を吸い込んだ。

「あたしは……」


つづく