きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

忘れられないもの22


みなさん、こんにちは!
今回の話は辛いシーンが少しだけあります。みなさんがダメージを受ける可能性があるために最初にお伝えしておこうと思います。


これはかなりショックだと思います。
私が読者だったら痛い。一瞬でもシャルルを失う怖さを見たくない方は読まない事をお勧めします。
万が一読んでしまって不快になったとしても一切責任は負えませんので自己責任でお進み下さい。
今回の話を読まなかったとしても次回以降でさらっと回想シーンを入れますので話は通じると思います。









結果的にはシャルルは平気です。
もちろん他の方も平気です。
でも一瞬、胸が裂けそうになります。
先を知りながら書いている私でさえ、辛かったという事を踏まえて、それでも読んで下さるという方だけどうぞ。



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「お客様、大丈夫ですか?」

しゃがみこんだあたしに受付のお姉さんが声を掛けてきた。
辺りからはどうしたんだろう?何があったの?と囁き声が聞こえ始め、あたしは「大丈夫です」と言って立ち上がり逃げるようにその場を離れた。
どこへ向かうでもなく歩いていると視界が一気に開けるような大きな窓が見えた。あたしは吸い寄せられるようにその窓に近づいた。
大きな窓からは、まさに夜空に飛び立つ飛行機が赤い光を纏い、飛び立って行くのが見えた。次第に小さくなっていく白い機体は夜の闇に飲まれるようにその姿を隠し、僅かに残る赤い光だけがその存在をあたしに知らせているようだった。

あたしは涙で滲むその赤い光をいつまでも見送っていた。
高瀬さんとの事をちゃんと話す事も、自分の想いを伝える事もできないまま、シャルルは行ってしまった。
あのホテルで最初にシャルルを見かけた時に声をかける勇気があたしにあればこんな思いはしなくて済んだのかもしれない。いつだってそうだ。
シャルルと別れてから自分の本当の気持ちに気付いた時もそうだった。思いを伝えることはいつでもできたはずなのにあたしは八年もの間、何もしなかった。

もう帰ろう……そう思った時アナウンスが流れてきた。


「十二時発パリ行きAF269便のエンジ…トラブルによる……のため……先ほど…」


うそ?!
それってシャルルが乗った飛行機じゃない!ザワザワしていてアナウンスがよく聞こえない。掲示板の離発着が全て運行見合わせに変更された。
まさかっ…!
いやよ、シャルル……。
体じゅうの血が心臓に向かって一気に流れ込むように鼓動が激しく脈を打ち、呼吸がうまく出来なくてあたしは息苦しさで目の前がチカチカしてきた。
立っていられなくて座り込んだ。息を吸いたいのに全然吸えなくてどうにも苦しくて横になった。
苦しい……誰か……。
薄れいく意識の中で遠くに繰り返されるアナウンスが聞こえたような気がした。

「繰り返しお知らせ致します。269便は離陸直後のエンジ…トラブルにより当空港へ緊急 着陸した影響により…運行見……」


「良かった……無事なの……シャルル」

遠くで誰かに抱き起こされるのを感じながらあたしはそのまま意識を失くした。




つづく