きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

夢から覚めて17


シャルルは何をしに来たの?
でも折角来たのにあたしが寝ちゃってたもんだからそっと寝室まで運んでそれで帰ったんだわ。
そうよ、いくらあたしだって自分でベットに行った事ぐらい普通覚えてるものね。記憶がないって事はそういう事だったんだわ。
だけど何の用だったんだろう?

一緒に飲もうとか少し話をしようって時間じゃない。なにか大事な話でもなきゃそんな時間に来たりしないよね。
その時あたしはハッとした。
胸の中がザワザワとしてあたしは急に不安になった。
その答えにたどり着きたくなくてあたしはそれ以上考えないようにするんだけど
止められるはずもなくて一つの答えに行き着いてしまった。




まさか…別れ話…?


一度そう思っちゃうと他には何も思いつかなくてあたしはただ呆然とするしかなかった。
やっぱり昨日の事が原因かもしれない。
あたしがフランス語を辞めるって言った時のシャルルの顔が思い浮かんだ。


その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
まさか…
シャルルっ…?!


息を飲んであたしが動けずにいると再び扉をノックする音が聞こえた。
そっと扉に近づき声をかけた。


「だれ?」


「エマでございます。」


シャルルじゃなかった事にホッとしたあたしは一気に力が抜けた。
今、いきなりシャルルに来られても心の準備が出来てないもの。


扉を開けるとお世話係のエマが立っていた。彼女は主にあたしの身の回りの事をしてくれるメイドさんなの。だからって四六時中一緒にいて世話をしてくれるわけじゃなくて何か頼みたい事がある時だけ来てもらう程度よ。
そして今日は特に呼んだ覚えはない。
エマにそれを言うと彼女は首を振って答えた。


「いいえ、シャルル様よりマリナ様を検査室にお連れするようにと言われて来ました。」


「シャルルに?」


「はい。」


検査室ってこのお屋敷の中の診察室みたいな所らしくあたしはまだ一度も行った事はなかった。
きっと忙しいシャルルはそこで仕事をしなきゃいけなくて時間もないからあたしを呼び寄せたんだわ。あたしは戸惑いながら彼女の案内で検査室へと向かった。


エマがノックをすると中からシャルルの声が聞こえた。


「開いている。」


この扉の向こうにシャルルがいる。
顔を合わせたら別れ話を切り出されるのかもしれないと思うとあたしは急に怖くなって立ち止まった。
そんなあたしの横で彼女は扉を開けると「どうぞ」と小さく言った。ここでこうしていても仕方がない。意を決してあたしは部屋の中へと足を踏み入れた。 
一歩中に入ると消毒液の香りが鼻をつき、大きな机やパソコン、それに診察台や薬の棚、たくさんの機材が目に入った。まるで本物の病院みたいだった。
扉の閉まる音がしてエマが部屋を後にすると完全にシャルルと二人きりになってしまった。


「マリナ、そこに座って。」


奥から白衣姿のシャルルが現れた。
シャルルはあたしに声をかけると自分は大きな肘掛け椅子に座って机の上に置かれたトレーの中から試験管のような物を手に取った。

「マリナ、いくつか検査をするから採血するよ。」

へ?

慣れた手つきであたしの腕にチューブを巻きつけ消毒綿を塗りつけていく。

「ちょっと待って!なんで注射なの?
シャルル一体どういうこと?」

昨日あたしの部屋に来たのは別れ話をするためじゃなくてこの為だったの?

「注射じゃなくて採血だ。
抗体ベンゾアピンの含有量を調べる。代謝酵素CY1A43はすでに排出されているはずだが。」


それってジルの言ってた薬のこと?
でもなんでシャルルがそれを?

「親指を中にして手をグッと握って。動くなよ。」

ブスっと針があたしの皮膚を突き破り試験管の中に血が流れていくのを見てあたしは目を逸らした。なかなか終わらないそれが気になってチラッと見ればシャルルは手早く試験管を次々と交換していき、三本目を取り終わると針を抜き取りあたしの腕にペタッとシールのような物を貼った。

「はい、終わり。数分あれば結果が出るからそこで待ってて。」

何も聞けずにいるあたしを残してシャルルは奥の部屋に消えていった。





つづく

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みなさん、こんにちは!
クリスマスも終わり今年も残りわずかですね。うちはまだツリーが出ています(笑)早くしまわなきゃお正月が来ない

「夢から覚めて」も残り少しですが今年の更新は今回で最後になると思います。
一年間お付き合いくださった方、本当にありがとうございました
また来年もよろしくお願いします。
みなさん、よいお年を