きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

碧色のバカンス15

音を立てて岩が崩れ落ちて来たのはあたしが穴を通り抜けた直後のことだった。

「危なかったーー!」

あと少し遅かったら岩の下敷きになっていたかもしれない。
ふぅーっと息を吐き、額の汗をぬぐった。手のひらと両膝についた土砂利を払いながらあたしは立ち上がり、辺りを見渡した。
よし、誰もいないようね。ワンピースの裾の結び目を解いてパンパンとはたいた。
まずはシャルルに言われた通りに密林に逃げ込んで安全を確保した上でジルに連絡しよう。
そう思った瞬間、あたしはあることに気がついた。考えてみればあの扉の仕掛けはなぜかジャガーの刻まれていた内側からは全く開けることができなかった。だけど外側、つまり蛇が刻まれていた方からなら開くんじゃないの?
だってあたし達はあの扉を開けて中に入ったんだもん。シャルルはきっとそのことを忘れてるんだわ。
あたしは密林にくるりと背を向け、シャルルと最初に遺跡内に入った扉に向かって歩き出した。
どう考えたってジルが来るのを待つより、あたしが外から開けた方が確実に早いわよ。
ところが扉の前にはサングラスをかけた男が一人、辺りを気にしながら立っていた。あれじゃ扉に近づけない。
あたしの作戦は敢えなく中止となった。
仕方なく密林の中に身を隠すとシャルルに渡された携帯でジルに連絡をとった。
あの男はおそらくあたし達を閉じ込めた犯人にちがいない。だからシャルルはあたしに扉を開けろとは言わずにジルに電話しろって言ったんだ。

ジルに連絡をしてから数分後、サイレンの音が聞こえてきた。次第に大きくなるサイレンに男は「shit!」と吐き捨てるように言うとその場を立ち去って行った。
あたしはその様子を木の陰から見ていて男がもう戻って来ないのを確認すると遺跡の入り口へと向かった。
すぐに蛇の模様の石は見つけることができた。シャルルがしていたのと同じように石を押してみる。だけど石はビクともしない。シャルルは簡単そうにやってたけど結構な力がいるんだ。しばらく石と闘っていると、遺跡の東側からジルが警官と共に姿を見せた。あたし達が最初に遺跡に入ろうとした方から回って来たんだわ。アドルフも一緒だ。

「マリナさん、大丈夫ですか?!」

「あたしはこの通りピンピンしてるわ。それより早くシャルルを助けて!」

アドルフの手で蛇の模様が刻まれた石は難なく動かされ、閉ざされていた扉がゆっくりと開いていく。その様子を見ていた警官達からどよめきが聞こえてきた。
誰もこんな所に扉があるなんて知らなかったんだわ。
その後シャルルが警官に事情を説明し終えるのを待ってあたし達はホテルに戻った。

「お二人とも大変でしたね」

「あのまま出られないかと思ったわ。それにしてもあの男はどうしてあたし達を閉じ込めたりしたのかしら?」

ジルの入れてくれたお茶を飲みながら隣に座るシャルルにそういうとシャルルは鋭く空中を見据えていた眼差しをあたしに向けた。

「この島のリゾート開発絡みだろうな」

「リゾート開発?」

あたしは話が見えずにシャルルの言葉を繰り返した。

「ジル、例の件は?」

「シャルルの見立て通りでした」

そういうとジルはバックから資料を取り出しシャルルに渡した。
シャルルはそれに目を通していく。

「やはりそうか」


つづく