きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛は記憶の中へ 3

処置を終えたタイミングでメイドが女を迎えに来た。

「シャルル様、ゲストルームの準備ができました。榎森様をお部屋までご案内いたします。」

オレは小さく頷いた。
そうか。この女は榎森というのか。なぜか放って置けずに屋敷まで連れてきたが名前など気にも留めていなかったな。

「名は……下の名は何というんだ?」

ふと気になり、メイドに続いて治療室を出て行こうとする女にオレは声をかけた。

「みさ。わかるかな?美しいに糸へんにすなって書くの。日本のお菓子に紗々ってあるんだけど知らないわよね。あの「さ」って字なの。あたしあのチョコレート好きなのよね!高級感があってパリパリって何枚でもいけちゃうの。」

フランス人だからわからないと思ったのだろう。オレはペンをさっと走らせた。
『美沙』の文字を見せると、

「漢字まで書けるの?!えっ?しかも字も綺麗!」

「当たり前だ。オレを誰だと思っているんだ。」

「えっと、シャルル……ルイ……??」

オレは掌を額をあてた。
どうやらアルディとルイを覚え違えているようだ。いや、聴き間違えたのかもしれない。
どちらにしろフランス王家について日本人にはあまり馴染みがないのかもしれない。そうでなければ彼女が単に無知なだけだ。どこか懐かしい感覚に頭の奥が痺れるようだ。

「それはわずか10歳という若さで悲劇的な最後を迎えたフランス国王ルイ16世とマリーアントワネット王妃の次男の名だな。」

オレは改めて自分がアルディ公爵家当主シャルル・ドゥ・アルディだと伝え、さらに一つ提案した。

「明日、サンシュルト教会前広場のクリスマス市場に行かないか?パリへ来て何も見ずに帰国するのもつまらないだろう。それに明日のクリスマスのミサはキャンドルサービスがフランス中の教会で華やかに行われるんだ。」

「クリスマスのミサ?あたしと同じ名前ね!それってお祭りみたいなもの?出店とかあるのかな。」

彼女は両手を胸の前で合わせて、まるでお祈りをするかようにして遠くに視線を向けた。どうやら思った以上に楽しみにしてくれているようだ。
どうやら急ぎの用ができたな。
オレはフレデリックを大使館に向かわせていたことを思い出す。
まだ間に合うか。
パスポートの再発行手続きには数日はかかるが、帰国のための渡航書なら即日発行される。オレはフレデリック渡航書の発行を頼んだ。彼女が財布まで盗まれたのなら観光などしていられないだろうとふんだからだ。
だが、この渡航書では周遊は許可されない。オレはすぐにフレデリックへ電話をかけた。

 

つづく

 


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みなさん、こんにちは!
今年も今日で最後ですね。この一年、ブログの引越しや休止など創作活動はあまりできなかったけど、ようやく新しい話も始めることができて活動再開にホッとしています。
これもみなさんの応援のおかげです。
本当にありがとうございました😊また来年もよろしくお願いします。
さて、本編はシャルマリ派の方には不穏な流れになっていますが、私はシャルマリ推しなのでご安心下さいね👍
では、良いお年を!