みなさま、こんにちは。
今回のお話はBL要素を含んでいます。
苦手な方はご遠慮頂ければと思います。
CPはシャルマリですが、シャルルとは関係ない所でモブが登場します。
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一体何通あるんだ?差出人全員の情報を記憶し、さらにデータベースを新しく一から作り直せってどういうことだ。
すでにオレは情報管理画面を前に何時間も座っている。
プラハで見事にシャルルを復活させたオレは、パリへ戻されアルディの屋敷で生活をするようになっていた。
ザイラー博士の手術はほぼ完璧なものだったが、さらにオレは不活血流による今回のような発作に備えるため、新たに脳内から脳幹にかけて新バイパスを作った。
これにより安定的な血流量を確保することに成功し、シャルルは順調に回復した。
オレが執刀したのだから当然のことだが。
ただしオレの存在は外部には伏せられた。
オレの存在を利用しようとする人間が現れないとも限らない。親族会議でも論点はそこだったようだ。たとえオレに二度と当主資格がないとしてもあの時の脅威を危惧する年寄り共は最後まで首を縦には振らなかった。
ただスペアはないよりあった方が……そういうことなのだろう。
陽が傾き始めたころ、オレは山ほどの封書の中からある物を見つけた。
宛名に興味をひかれ、単純作業からの解放に心が躍った。裏返して差出人を見るとそこには見覚えのある人物の名があった。
あたりに散らばる封書を押しのけてペーパーナイフを手に取る。
手早く開封し、目を通すうちオレは久々に興奮をおぼえた。
「これはおもしろくなりそうだ……」
「ミシェル様、どうかされましたか?」
向かいの席で作業をしていたレンが顔を上げた。彼は名目上は秘書だが実質的にはオレがアルディ家に来てからの監視役として常にそばにいる男だ。
「いや、飽きたなと言ったんだ」
レンは後ろに積まれているいくつものコンテナを振り返る。その隙にオレは手にしていた封書をポケットにしまい込んだ。
「これも大切な仕事です。きちんと憶えていただかないと私がジル様に叱られてしまいます」
レンはそういうと困ったように眉を寄せた。
「安心しろ。オレは一度見たものは忘れたりはしない。それにこんな作業はただの建前でどうせジルの嫌がらせだろ?」
オレは立ち上がり、積まれているコンテナを右足で小突いた。
「誰かに聞かれたらどうするんですか?否定的な言動はお控え下さい」
レンは慌てて椅子から立ち上がった。
「ここにはオレとお前しかいない。それとも?」
オレは手を窄めてカメラのジェスチャーのまま、レンの様子を伺った。
レンはすぐに首を横に振った。
「ここにはありません。あるのは私たちの部屋といくつかの部屋だけです」
アルディ家に来てからオレはこのレンと同じ部屋にされた。初めはどれだけ警戒されてるのかと思ったのだが……。
オレはレンの肩に腕を回し、引き寄せた。
「そのいくつかの部屋ってどこなんだ?」
「そ……そ、それを知ってどうするんですか?」
オレはレンの耳元に唇を寄せた。
「それらの部屋では否定的な態度は控えるよう心がけよう」
「怖いんです。私が話すことでミシェル様が何かするのではないかと。だからこういうのはやめて下さい」
レンはオレの腕を振り解くと自分の席へ戻った。オレもあとを追うように自分の席に着いた。
「心配するな。レンを置いて行くようなことはしない」
つづく