きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

碧色のバカンス23

真っ直ぐに伸びる長い滑走路の先には碧色の海が広がっている。
ここはブルーホールを遊覧するためのセスナが数台置かれている島にある唯一の飛行場。

「ここから先はオレひとりで本土へ行ってくる。ジルには君を迎えに来るように言ってあるから一緒にホテルに戻っていてくれ」

「え?あたしも一緒に行くわよ」

あたしの言葉にシャルルはサラリとした髪を揺らしながら残念そうに首を振った。

「昨日の今日だったからね。さすがに一人用のセスナしか調達できなかったんだ」

そういうとシャルルは一つだけ離れた場所に置かれている小さな機体に視線を向けた。それはとてもコンパクトな造りで、たしかに一人しか乗れなそうな小さなセスナ機だった。
駆け寄ってきた飛行場のスタッフから鍵を受け取るとシャルルは長身の体を窮屈そうにコックピットに押し込み、それからあたしに敬礼を一つしてみせると、機体は大空へ吸い込まれるように飛び立って行き、白い機体はすぐに小さな点のようになった。

あたしはスタッフに案内されて飛行場内にあるマリンブルーと白を基調としたアメリカンハウスのような建物に入った。
中には軽食コーナーがあって、フルーツジュースとパンケーキをいただきながらジルの迎えを待った。

その間、三組のカップルがセスナの遊覧へと飛び立っていった。
最後に入ってきたカップルはキャンセル待ちだったらしくツアー会社から連絡をもらって急いでここへ来たって感じだった。
きっとあたし達がキャンセルした分だ。
シャルルと遊覧できなかったのは残念だったけど、無駄にならずに済んでよかった。誰かが楽しんでくれるならそれに越したことはないものね。

「そんな顔をしていたらシャルルががっかりしますよ。日程が決まってすぐにシャルル自らここの予約していたんですよ」

驚いて振り返るとそこにはジルがいた。
ぼんやりと他の観光客の様子を見ていたからジルが来たことに気がつかなかったわ。

「シャルルが?」

「ええ。珍しくご自分で。シャルルもきっと楽しみにしていたんですよ」

「そうだったのね。事件を解決してほしいなんて言って悪かったかしら」

「いえ、マリナさんの正義感の強い所もシャルルは好きなんだと思いますけど」

からかうようにそういうとジルはくすりと笑ってみせた。
あたしは何だかくすぐったい気持ちになった。


その日シャルルがサンペドロに戻ったのは辺りが暗くなり始めた頃だった。

「おかえりシャルル。それで何かわかった?」

「あぁ、いろいろとね」

そういうとシャルルは窓の外を眺めながら静かに話し始めた。

「この島は本土からの観光客の動向により成長を続け、今では世界でも有数なリゾート地となった。訪問客のニーズの多様化、時代の流れ、そして価格競争という問題と向き合ってきた結果、今回のような事件が起きたといってもいいんだろうな」

窓から射し込む夕日がシャルルの白い頬を赤く染め、その美貌にゾクリとするほどの美しい影を浮かばせていた。


つづく