玄関が勢いよく開かれ、ミシェルとアネットが飛び出してきた。
「ミシェル達だわ!」
ミシェルは後ろを気にしながらアネットの手を引いてこちらへ向かって走って来る。
後を追うように男達も次々と姿を見せた。
二人は逃げてきたんだ。
「シャルル様、ここは私が。マリナ様と早く車へ避難して下さい」
シャルルは駆け出そうとするダニエルの肩に手をかけると心配するなと宥めるようにその肩をポンと叩き、ミシェル達の方へと歩き出した。
あたしは慌ててシャルルの腕を掴む。
「待ってシャルル!相手は六人よ。あんたまで捕まったらどうするのよ!?」
「大丈夫だ。彼らはオレに手出しはしないよ」
「そんなのわからないじゃない!」
あたしはどうにかしてシャルルを止めようとした。だけどシャルルは長いまつ毛を伏せ、もう一度「大丈夫だから」と言って優しくあたしの手を解くと歩き出した。きっと男達と直接交渉するつもりなんだ。
シャルルの元へミシェルとアネットが駆け寄って来た。
「先に車に乗っていろ」
ミシェルはアネットの背中を押してあたし達の方へと送り出した。
「無事で良かった」
あたしはアネットに駆け寄り、彼女の両手を握りしめた。
「マリナさん」
「怖かったでしょ。でももう大丈夫よ」
「ええ。でもミシェルさんが……」
息を上げ、肩を上下させながらアネットは心配そうにミシェルを振り返った。
シャルルは男達を迎え討つようにピタリと歩みを止め、ミシェルはそのすぐ隣に並んだ。
その瞬間ミシェルはバッと何かを避けるように顔を背け、頭上に手をかざした。
ミシェルのその姿を見てあたしはハッとなった。さっきのあたしと一緒だわ。
「どういうことだ?!」
ミシェルはかみつかんばかりの勢いでシャルルを睨んだ。
男達がゆっくりとシャルル達の前に歩み寄り、そして足を止めた。
「よし、そこまでだ」
シャルルが男達に向かって言い放つ。男達は一斉にシャルルの脇に控えた。
ど、どうなってるの?!
シャルルは男達を見渡し、満足げに頷いた。
「おい、どういうことだ?!」
ミシェルは納得できないといった顔でシャルルに詰め寄る。
「では撤収する。レオンス、車は?」
男達の中の一人が一歩前に進み出る。
「準備できております」
シャルルはミシェルの問いには答えず歩き出す。
「アルディに戻るぞ。話は後だ。マリナ、アネット、君たちも」
レオンスと呼ばれた男は耳に手をあてると何かを話しだした。
「車を回せ」
よく見れば前にシャルルが耳にしていたやつと同じ小さな電話のようだ。
すると黒塗りの車があたし達の前に滑り込んできた。
「マリナおいで。ミシェルとアネットはその車に」
あたしはミシェルに駆け寄った。
「ねぇ、あれって」
あたしは玄関ドアの上にきらりと輝く物を指差すとミシェルは怒りが収まらないといった顔で頷いた。
「アルディ家の紋章だ。ここはアルディの建物ってわけだ」
「どういうこと?」
「知らん」
憤慨した様子のミシェルはそれだけ言うとアネットの背に手をあて、先に乗るように言い、自らも車に乗り込んだ。
アルディ家の建物に二人は監禁されてたってこと?
「マリナ、置いていくぞ」
わけがわからずに立ち尽くすあたしを置いてシャルルは車に乗り込んだ。
きゃー!待って!
つづく