「アネットなんじゃない?!」
あたしが部屋にいなかったからアネットはきっと図書室へ行ったんだわ。あそこはミシェルの執務室からそれほど離れていない。
もしかしたらミシェルを拐おうとした所にアネットがちょうど通りかかって、それで巻き込まれたのかもしれない。
「その可能性は十分に考えられるが現段階では何とも言えない。とにかくその女性とミシェルを必ず無事に救い出してみせるよ」
「でも……」
シャルルは簡単に言ったけど二人に何かあったらと思うと不安でたまらなかった。
シャルルはそんなあたしの肩をそっと抱き寄せた。
「心配ない。アルディに侵入してまでミシェルを攫って行ったのは何か必ず目的があるはずだ。それを果たすまではむやみに危害を加えたりはしないだろう」
シャルルのこの言葉であたしは落ちつきを取り戻した。
「ダニエル、館内防犯システムから女性の身元をすぐに調べさせ、拐われた二人の行方を追え」
それからしばらくしてシャルルの携帯が鳴り響いた。
「オレだ。何かわかったか?」
あたしはその電話に聞き耳を立てたけど、シャルルは相槌を打つばかりで話の内容まではわからなかった。
シャルルの電話が終わるのをあたしはじりじりと待った。
数分後、電話を終えたシャルルは深刻な顔であたしにソファに座るように言うと自分も隣に座った。
「マリナ、オレがプレゼントしたペンはどうした?」
「ペン?」
話が見えなくてあたしが聞き返すと、
「ミシェルと一緒に拐われたのはやはりアネットだった。彼女は図書室でメイドに君にペンを渡して欲しいと頼まれ、あのペンを持っていたそうだ」
あたしはミシェルがメイドに探すように言ってたのを思い出した。
「あっ!ミシェルを引き止めようとして図書室でなくしたってことにして本棚の隅にそっと置いてきたんだった」
「そうか、それならミシェルとアネットの二人はおそらくオレと君の代わりに拐われた可能性が高い」
「どういうこと?」
「犯人グループは何らかの目的で本邸内に侵入した。そしてオレとよく似たミシェル、そして君のイニシャル入りのペンを持ったアネットを攫って行った」
「人違いってこと?!」
シャルルは青灰色の瞳を伏せると静かに頷いた。
「そういうことになるな」
「あたしのせいだわ。どうしようシャルル!?」
あたしがイルカ大作戦なんて言って余計なことをしたからアネットを危険な目に遭わせちゃったんだ。
「大丈夫だ。ミシェルにはGPSを常に携帯させているからすぐに居場所は特定できる」
ミシェルがGPSを?
だったらすぐに見つけられるわね。
つづく