きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

時を越える夢 17


「今日の親族会議でマリナを正式に婚約者として認めさせる」

「私もマリナさんとの結婚には賛成ですが、次の候補として何人かのご令嬢の名前もすでに上がってきていると聞いてます。長老の方々が何と言うか、それに採決ともなれば分が悪いのでは?」

「オレが次期大統領選に出馬すると言ったら?」

「シャルルはそれでいいのですか?」

ジルの表情が曇った。
オレがモザンビークの経済を独立させるために家柄の釣り合う相手と適当に結婚すると話した時と同じ反応だ。
今回は相手がマリナだが、大統領選出馬の話にはジル自身、思うところがあるのだろう。

「マリナを表舞台に連れ出すことは不本意であるが、今はそれぐらいしか手がないからな。それにモザンビークの支援活動の一環として、まずは財団法人基金を設立したが目標額にはまだほど遠い。基金を運用し、資金を増やすにはさらに時間を要するだろう。それならアルディ家の当主となり、アルディの総意として正式に国連に働きかけた方が早い。それに次期大統領選が行われる年にオレはちょうど候補者要件である23歳になる。任期は5年だ。その間は二足の草鞋を履くことになる。モザンビークへの支援活動に専念できないのは残念だが仕方ない」

親族会議ではさらにミシェルの責任問題とこれからについても話さなければならない。長老達からはミシェルへの制裁を求める声が多い。今、このタイミングでオレは手札を切るしかない。
マリナを婚約者として認めさせること、そしてミシェルのアルディ家への戸籍の復活ともなればこれぐらいの犠牲は仕方ない。
オレが勝てばナポレオンを抜き、史上最年少でのフランス大統領の誕生となる。これはアルディ家の悲願でもある。
ただ、その間は想像せずとも多忙なのは目に見えている。マリナにも寂しい思いをさせてしまうだろうがもうこれしかなさそうだ。

「会議が終わるまでマリナを頼む。狙われる危険がゼロではない。家柄重視の頭の堅い奴らも中にはいるからな」

「わかりました」

以前にもオレの代役を務めたことのあるジルならオレの部屋のセキュリティも問題ない。不自然に警備を強化するより安全だ。

「では行ってくる」

執務室前でジルと別れ、オレはそのまま親族会議の開かれるカンファレンスルームへと向かった。

***

「私から一つ提案がある」

会議の冒頭、オレは声を上げた。
円卓を囲むように座った十数名の長老達が一斉にオレに注目した。
議長を務めるルパートがオレの隣で一体何を言い出すんだと鋭い視線を向けてきた。
オレの話に全員が耳を傾けた。
議題は三つ。
ミシェルの責任問題は問わないこと。
戸籍の復活とロワールの館への移送。
そしてマリナとの婚約。
すでにミシェルの話をした時点で会議室には不満の声が上がり始めていた。
マリナとの婚約の話に及ぶと、長老達の中で話にならないと席を立とうとする者も現れた。

「話はまだ終わっていません。リシャット叔父さん、どうぞお掛けください」

まだ正式な当主ではなくてもアルディ家本家の嫡男のオレからの名指しに、父のすぐ下の弟であるリシャットも立場をわきまえ、着席した。

「これらの条件の対価としてーー」

その時、会議室の扉がバっと開きジルが姿を見せた。
何かあったのか?!

「下がれ、ジル!会議中だぞ」

ルパートが嗜めるように声を上げた。
警備員がジルの元へと駆け寄っていく。

「私が許可する」

皆が注目する中、ジルは長老達に一礼をしてオレの元へと駆け寄ってきた。

「シャルル、これを」

オレはジルの手にしていたタブレットを受け取り、映し出された画像に目を見張った。
これはあの時のものだ!

基金への資金提供が集中し、サーバーがダウンしそうな勢いです」

 


つづく