きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

Reve de continuation 14

「シャルルっっ?!」

とっさにアンドリューが倒れ込むシャルルの体を受け止めた。あたしは訳もわからずに立ち尽くしているとジルが駆け寄って来た。アンドリューの腕の中で意識のないシャルルは力なく体を預けている。

「シャルルは頭を撃たれて手術したばかりなんだ。だからお医者様には無理をさせちゃいけないって言われてて……」

泣きそうな顔でアンドリューはそう言った。頭を撃たれたってどういうこと?!

「ダリウスっっ!」

ジルに呼ばれてすぐに四十代ぐらいの男の人がシャルルに駆け寄り、そばにいた人達に指示を出した。

「フランツ、ストレッチャーをここへ。すぐにシャルル様を治療室へお運びするんだ。それから血圧抑制薬と強心剤もだ。アンドリュー様、もっと詳しく聞かせて下さい」

あたしは慌ただしく駆け出していく人たちをただ見つめるばかりだった。

「数日前、シャルルはボクを庇って頭部に銃弾をうけた。その時はまだ脳内に弾が残ったままだった。緊急手術を受けたけど一度は脳死とまで言われたんだ。意識が戻らないまま数日が経ち、ザイラー博士の再手術によってシャルルの意識は戻ったばかりだったんだ」

あたしは息を飲み、シャルルの顔を見つめた。顔面は蒼白で額には汗が滲んでいる。それからすぐにシャルルは治療室へと運ばれていった。

「あたしのせいだわ。手術したばかりなのにあたしが突然現れたりしたからだわ」

隣の治療室は何の動きもない。ただ時間だけが過ぎていく中、あたしはポツリと呟いた。
するとアンドリューがあたしの前に立ち、首を振った。

「違うよ。マリナさんは何も知らなかったんだから仕方ないよ。ボクがいけないんだ。ボクがちゃんと見てなかったせいだ」

「どちらのせいでもありません。シャルルならきっと大丈夫です。
シャルルは自身の状態を常に客観的に把握しているはずです。
そのシャルルが判断し、行った行動に間違いなどありえません」

自らの行動を責めるあたし達をジルはこうして励ましてくれた。
他の誰かがそう言ったのなら信じがたいことでも、ジルの言葉なら信じられる気がした。
緊張と悲しみの空気を打ち破るように部屋のドアが叩かれた。あたし達は一斉に立ち上がった。

「シャルル様の意識が戻りました。ザイラー博士が行った手術は完璧なものでした。今回は術後まもないことと航空機の移動による気圧の変化及び、脳血圧の上昇により、活動電位が発生したものと思われます。このまま安静にしていれば何の問題もありません」

ダリウスのその言葉に皆が安堵の息を漏らした。

「シャルルに会っても平気?」

あたしがそう言うとダリウスは静かに頷いた。

「まだ意識が戻ったばかりですので、お一人だけでしたら大丈夫です。ただし、あまり刺激を与えないことと、短い時間でお願いします」

「マリナさん、行ってらして下さい。私たちは部屋に戻っていますね」

ジルはそう言うとアンドリューと共に部屋を後にした。あたしはダリウスの後に続いて治療室へと向かった。
一歩足を踏み入れるとそこは、まるで病院の一室のような部屋だった。
部屋の真ん中に置かれたベットの上でシャルルは横たわっていた。
あたしはそっと近づいた。

「シャルル?」

シャルルはゆっくりと振り返りあたしを見ると自嘲的な笑みを浮かべた。

「マリナ、心配かけてすまない」

あたしへと手を伸ばすシャルルの手をそっと握った。

「無事で良かった。あんたにもしものことがあったらと思ったら……あたし……」

「オレは大丈夫だから、泣かないで」

「本当に大丈夫なの?」

シャルルは肘をついて体を起こすと腕に刺さっている点滴をチラッと見た。

「あぁ、大丈夫だ。君に会えて少し浮かれたようだな」

「シャルル……」

シャルルはダリウスに視線を向けた。

「活動電位の発生による脳血圧の上昇か?」

「はい。イオンチャンネルを遮断し、カリウムイオンを投与しました」

シャルルは頷くとベットから降りようとした。

「ダメよ、寝てなきゃ」

あたしは慌ててシャルルを止めた。

「大丈夫だよ、もう点滴のおかげで脳圧も正常に戻っている。それにオレは忙しいんだ。君を一人にしておいたら良からぬことを考えそうだからね。自分のせいでオレが倒れたとか考えたろ?」

言い当てられてあたしは一瞬、言葉に詰まった。でも……。

「どこへも行かないわよ。あたしはあんたと一緒にいるって決めたんだもの。だからちゃんと治してほしい」

「わかった。君の言う通りにしよう。ただし、私室で休むことにする。もちろん、君も一緒にだよ。いいね?」

シャルルは終わりかけの点滴を手際よく抜き取るとダリウスにいくつかの薬剤を部屋に用意するように指示をした。

「じゃあ行こうか」

そう言ってシャルルはあたしの手をとり、治療室をあとにした。



つづく