きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

碧色のバカンス2

チェックインを済ませたあたし達はシャルルが到着するまでひとまずそれぞれの部屋で過ごすことにした。

「ではマリナさん、何かあったらすぐに電話して下さい。それから部屋からは絶対に出ないようにお願いします」

「うん、大丈夫よ。疲れたからシャルルが来るまで少し休むわ」

ジルとアドルフはあたしを部屋に送り届けるとそれぞれの部屋へと戻っていった。
相変わらずシャルルの予約した部屋はなんとも豪華な部屋だった。
寝室は3つあってメインの寝室は青色を基調としたバラードグリーンのベットカバーにナイルブルーのカーテン。
これは完全にアルディ家の寝室と同じ物でシャルルがホテル側に設えさせた物だとすぐにわかった。
数日泊まるだけなんだからホテルの仕様のままでいいと思うんだけどシャルルは落ち着かないからいやだって言うのよね。
まったくこだわりがあるというのか、わがままというのか。
それ以外の寝室はシャルルからの指示はなかったらしくクロームオレンジを基調とした可愛らしい部屋とラベンダーグレイの大人の雰囲気の部屋だった。

あたしはいつもとは違う雰囲気を味わおうとオレンジ色の部屋でゴロンと横になった。空調でコントロールされた部屋は外の暑さが嘘のように快適であたしはすぐに眠りの世界へと落ちた。
それからどれくらい寝たのか、シャルルからの電話で目を覚ました時には辺りはすっかり暗くなっていた。

「それでそっちはどんな感じなの?」
「朝には産まれると思っていたんだが続発性微弱陣痛で時間がかかりそうなんだ」
「それって大丈夫なの?」
「問題はない。単に循環血液量の増加で人工心臓の血流が弱まったのだろう。促進剤と造血製剤を投与して様子をみているところだ。おそらく出産は明け方近くだろう。すぐに空港に向かってもそっちへ着くのは明日の午後だ。悪いがもうしばらくジルと過ごしていてくれ、じゃ」
「わかったわ」

電話の向こうの慌ただしさが伝わってくる。あたしの返事はちゃんと聞きていたのかすぐに電話は切れた。
忙しい中、それでも連絡してくれたんだから仕方ないわよね。
気を取り直してあたしはシャルルの分までしっかりと夕食をいただき、明日に備えて早めに寝ることにした。


***


昨日は早くに寝たせいか今朝はアラームが鳴る前に自然と目が覚めてしまった。
朝食の時間まではだいぶ時間がある。枕元に置いていた携帯をチェックしてみたけどシャルルからは何の連絡も来ていなかった。こっちから連絡しようかとも思ったけど羊の出産は明け方だって話だったから今頃はもう飛行機に乗っているかもしれないと思ってやめておいた。
窓を開けると澄んだ空気が気持ちよくてあたしはテラスに出てみた。目の前に広がる
海はきらきらと輝き、潮騒は優しく心に響いた。
まさにリゾート地ならではの素晴らしい景色だった。
早くシャルルにも見せてあげたい、そう思い、ふと胸元のネックレスに手を伸ばした時それがないことに気付いた。
あれ?!ないっ!
どこで落としたんだろう?
寝ているうちに取れちゃったのかしら?
慌ててベットの上を探してみたけどどこにもない。
どうしよう、あれは誕生日にシャルルに貰った大切な物なのに……。
もしかして傘を飛ばされたあの時、慌ててたから何かの拍子に外れちゃったのかもしれない。
早く探さなきゃ!
たしか海岸までは真っ直ぐ一本道だったわ。それにそんなに距離もなかった。
パジャマ代わりにしていたTシャツを脱ぎ捨て、ベット脇に脱ぎっぱなしにしていたマキシワンピを頭から被り、あたしは慌てて海岸へと向かった。
ロビーにはまだ人の姿はなく、フロント係の人が1人だけいて何か書き物をしているのか下を向いていて顔はよく見えなかった。
ホテルを出て70メートルほど走った所であたしはふと足を止めた。
考えてみればもし本当にネックレスを落としたのが砂浜だとしたら、あたし1人じゃとても見つけられやしないわ。
まだ寝ているかもしれないけどジル達にも手伝ってもらった方が賢明な気がして、あたしはすぐにホテルへと引き返した。
ところがホテルに戻ったあたしは2人に会うどころか、自分の部屋にさえ帰れなくなってしまったのだった。



つづく