きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

Reve de continuation 2

逃亡生活で毎日が緊張の連続だった生活から一転、いつもの生活に戻ったあたしはどこか物足りなさのような物を感じ始めていた。
常にシャルルといたから急に一人になって寂しく感じるのだろうか。
いやいやそんなはずはない。中学卒業してからだってずっと一人暮らしをしているんだもの。今さら一人が寂しいなんてことはない。
きっと刺激が足りないって脳が勝手に思ってるんだわ。むしろこれまでが異常に刺激あり過ぎだったのよ。
崖から飛び降りたり、ジェット機から海にダイブしたり、そりゃあんな経験はめったにできるもんじゃない。
もちろんしないに越したことはない。
そんなことをあれこれと考えているうちに、ふとシャルルは上手くやっているんだろうかという思いが湧き上がってきた。政治工作のもみ消しと宝飾品を取り戻さなきゃいけないって言ってたっけ。
あたしにはそれがどれだけ大変なことなのか、シャルルにだったら容易いことなのか全くわからない。
その時、あたしはシャルルのそばにいた時にはなかった新たな感情が自分の中で生まれていることに気づきハッとした。
それは疎外感だった。
部外者となってしまった自分。
そんな風に感じたり、思ったりするのは勝手だってわかってる。
でもシャルルの一番そばにいて、彼を理解し、力になれるのは自分だけだってあたしはいつしか思っていたんだ。
こうして離れてみて初めて気づいた。
今、シャルルと一緒にいる誰かにあたしは嫉妬している。
もしかして、あたし……。

「ジリリリーン」

けたたましく電話が鳴り響いた。
受話器を耳にあてると聞こえてきたのは照れくさそうに話す和矢の声だった。

「あっ、オレだけど……今お前の家の近くまで来てるんだけどさ、もし昼飯まだだったら一緒にどうかなって思って」

あたしは二つ返事で答えると急いで顔を洗い、プラスチック製の衣装ケースの中からお気入りの服を引っ張り出した。衣替えをするほどの服は持っていない。
三段の引き出しの一番上が下着とタオル、二番目が夏用で一番下が冬用。ハンガーにかける物は鴨居に引っ掛けて済ませている。狭い部屋にこれ以上、家具なんて置けないもの。
支度が済むとあたしは待ちきれずに玄関の外に出てみた。二階の手すりに体を押しつけるようにして通りの向こうに和矢の姿を探す。
突然の和矢からの誘いはモヤモヤしていたあたしの心を一掃してくれた。
和矢が会いに来てくれる。それだけで嬉しかった。
やっぱりあたしは和矢が好き。




つづく