きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

Reve de continuation 6

あたしはさっそく実家に電話をかけることにした。この時間はお母さんしかいないはずだわ。万が一お父さんが出たらどうしようかと思いながら呼び出し音を聞いていると、

「はい、池田です」

やはり電話に出たのはお母さんだった。
ホッと胸をなでおろす。家を出てからはあたしから電話をすることはなかったけど、お母さんからはたまに電話はきていた。それでもお母さんと話すのは久しぶりだった。

「もしもし、お母さん?」

「あら、マリナ?あんた元気にやってるの?仕事はどう?ごはんはちゃんと食べてるの?風邪ひいたりしてない?」

いつものようにお母さんからの質問ぜめにあう。ちゃんとやってるから大丈夫だと伝えて今回の家賃のことを謝った。するとお母さんからは意外な答えが返ってきた。

「何も知らないわよ、家賃のことなんてうちには何の連絡も来てないけど。もしかしてあんた払えてないの?」

逆に質問されてあたしは焦った。
実家に連絡が行ったわけじゃない?
どういうこと?

「もしもし?マリナ大丈夫なの?生活が大変なら家に帰ってきてもいいんだからね。お父さんはあんなこと言ったけど本当はあんたのことを心配してるのよ」

「うん、全然平気よ。なんか勘違いだったみたい。そうそう、思い出したわ。先月仕事が忙しすぎて払ってたのをすっかり忘れてたわ。ごめんごめん。また連絡するね」

あたしは早々に電話を切った。
実家には連絡は行ってなかった。
大家さんが忘れているだけ?
でも一日でも遅れるとうるさく催促してくるあの人が忘れたりするかしら。
電話を元に戻し、湯呑みを片付けようと立ち上がった時だった。
突然、一つの可能性がふっと思い浮かんだ。それはまるでパズルのピースがぴたっと嵌るみたいで、もうそれしかないんじゃないかと思えるほどだった。
でも、まさか……。
だけど和矢もお母さんも知らないと言っていた。そうなるとあの時、あたしの事情を知っている人間は限られている。見知らぬ誰かがわざわざうちの家賃を払ってくれるはずはない。
あたしはこうなるともうその考えが頭から離れなくなっていた。
でもシャルルはいつしてくれたんだろう。アルディ家から逃亡した後、シャルルはずっとあたしと一緒だった。
そういえば最初に孤島に移送されていった後、あたしとの約束通りモザンビークに行っていた薫や美女丸、それにガイを呼び戻す手配をしたと言ってた。まだオレの力が使えるはずだって。
あの時ならまだ身動きが取れたのかもしれない。
でもあの時はまだ一緒に逃亡をするなんて話にはなっていなかった。
もしかして、あの時すでにシャルルはあたしと逃亡することになるかもしれないって思っていた?
いや、そんなはずは……。
でも、もしそうだとしたら。
あたしは息を飲んだ。
あたしを連れて行けと和矢に言われた時、シャルルは流浪の身でそれはできないと言った。
だけど本当はミシェルを倒し、当主の座に返り咲くその時まで、あたしにそばにいて欲しかったんじゃないの?!
それなのにルパートに追い詰められ、シャルルが孤島に移送されようとしていた時、あたしは和矢と日本に残ると言った。
たまたまミシェルの当主資格が危うくなってシャルルはアルディ家に戻ることになってあたしは内心ホッとしていた。
シャルルを一人で孤島に行かせずに済んで良かったって思ったの。
同情ではなく、愛情を、シャルルではなく和矢を選んだことへの罪の意識のようなものが薄らいだんだと思う。
だけどシャルルを最後まで見届けようと自分で決めたことを覆したことに変わりはない。
今になってあたしは途中で投げ出してしまったことを後悔し始めていた。
どうして最後まで一緒にいてあげなかったんだろう。
シャルルの気持ちを考えると胸が苦しくなった。
苦しいほどあたしを好きだと言ってくれたシャルルの言葉を思い出す。
この言葉を聞いた時、あたしはシャルルを好きだと思ったんだ。和矢を思う気持ちとはまた違う愛おしさが胸の内から溢れ出したんだ。
シャルルが今どうしているのか、ちゃんと当主の座に戻れたのか。
それを確かめもしないでこのまま和矢と日本にいることはできない。



つづく