きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

夢から覚めて15


「…ヴェ パ …アレ オ ジャ…」



ベットに運ぼうとマリナを抱き上げた瞬間、オレは動けなくなった。
僅かだったがそれが何かすぐに分かった。愛おしさからマリナを抱く手に力が入る。


確かにフランス語だった。
Je vais pas aller au Japon(私は日本に行かないわ)


飽きてなどないじゃないか…。


オレの生まれ育った国の言葉を学びたいと思ってくれた事はとても嬉しかった。
だが正直なところオレはマリナの語学習得にはさほど期待していなかった。ここではフランス語を使わずとも十分生活はできる。たとえフランス語を覚えたとしても一人で外出させるつもりもなかった。
パリの街にマリナを一人で出してやれるほどオレは寛大ではない。
マリナがこの先もずっとパリで暮らそうと思ってくれてるなら気が済むまでさせておこうと思っていた。
それをあっさりと辞めると言い出した時、オレの中で和矢の存在がちらついた。いつかの時のようにマリナの手を放す日が近いのかもしれないとまで思った。
だが勉強を辞めると言い出したのはオレを心配しての発言だった。そうとも知らずにオレは和矢の名を出し、マリナを傷つけてしまった。和矢の影に囚われ続けていたのはむしろオレの方だった。

マリナがここに現れるまでのオレは湖面のような日々を過ごしていた。 
ただ目の前の仕事を淡々とこなす日々に身を置き静かな時間を生きていた。
あの頃の虚無の世界に戻っただけだった。そしてこの一カ月、オレの心はまるで荒波の中に放り込まれたようだった。


だが今、やっと一つの答えにたどり着いた。




マリナを寝室へ運び、ベットに寝かせた。規則正しい寝息を聞きながらしばらく寝顔をみていた。


これだけ動かしても起きないという事はまだあの薬が作用しているのか。
やはり一度検査はしておくべきか…そんな事を考えながらオレは自室へと戻った。


ジュブレ・デュ・シャンベルボンと共に窓辺に座った。漆黒の赤い液体をグラスに注ぎスワングさせる。空気に触れさせ本来の風味が戻ったのを確認するかのように僅かに口に含む。悪くはない。
別名、決意の時。
今のオレには似合いのワインだ。







つづく


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みなさん、こんにちは!
今朝ポストを見たら届いていました

【KZ’Deep File 青い真珠は知っている】


発売日から2日遅れで到着しましたが家の近所の書店よりはきっと早いはずと思いamazonで注文しました。今日は仕事が終わるのが待ち遠しいです。早く帰りたい←まだ通勤電車の中ですけどw