きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

夢から覚めて11


あの時の和矢への気持ちは懐かしさからだと気付いたのはシャルルと別れてからだいぶ経ってからだった。

シャルルとさよならしてからのあたしはずっと心の何処かにポッカリと穴が開いてしまったようだった。
何かが足りないような落ち着かないような…そんな気持ちでいた。
もちろんあれだけ朝から晩まで四六時中シャルルと過ごしていたわけだし、一人アパートにいれば寂しいと思うのも当然だとも思っていた。
でもいつまで経ってもその思いは消えずにむしろ日に日に増していくばかりだった。ポッカリと空いた心の隙間を後悔という名の黒い風が吹き抜けていくのを自覚した時、あたしは和矢と別れてパリに行く事を決めた。今さらかもしれないと思いながら、だけどもう後悔はしたくなかった。
そんな思いであたしはここに来たんだもん。だからシャルルに誤解されたならちゃんと話さないと。


「あたしね、シャルル…」


あたしの言葉を遮るように部屋の時計が終わりの時を知らせる。シャルルは時計に視線を向けた。


「悪いがマリナ、終わりの時間だ。」


「でも…。」


「どうしても外せない仕事なんだ。」


それ以上何も言えなかった。あたしはシャルルの部屋を後にした。仕事があるなら仕方ないもの。
音もなく静かに閉められた扉に背中を預けてあたしは涙を飲んだ。




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マリナが突然、フランス語の勉強は辞めると言い始めた。
なぜだ…?
日々の課題も悩みながらも一生懸命やっていた。オレはマリナとこうして過ごす時間を大切にしていた。
それなのに…。
辞めたいと言い出しておどけてみせるマリナに違和感を感じた。
マリナがパリに来てから拭えぬ想いを抱えて今日までいた。
いつか日本に帰りたいとマリナが言い出す日が来るかもしれないとオレはどこかで覚悟をしていた。
いや、そんな日は来ないかもしれないと信じていたのも事実だ。
昨夜すぐに眠り始めたマリナを寝室へ運んだ。オレのベットに小さな体を無防備に曝す姿を前に息を飲んだ。
手を伸ばせば届く程の距離だ。
だが、そうしなかった。
マリナがアルディで過ごす覚悟が出来るまでオレは君に触れる事はしない。
オレはメイドにマリナの着替えを任せ、執務室に向かうと落ち着かない気持ちを仕事で紛らわせていた。
外が明るくなり朝になった事に気付いた。もうマリナは起きた頃だろうかと考えていた。そして今夜、マリナの真実を確かめるつもりでいた。
その矢先に突然マリナから終わりを告げられたのだ。






つづく