きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の証50000hit感謝創作19


当主復権を果たしたオレは歴代の当主が使用したこの部屋を改装し使用している。改装の際に残したのはリビングに置かれていた柱時計だけだ。
紫色を帯びた暗褐色を呈し黒紫色の縞模様をもつローズウッドの柱時計は歴代の当主に受け継がれてきたものだ。

伝統を感じさせるその音色は普段であれば深みがあり心が落ち着くのだが今日は焦れるばかりだ。時を知らせる音は余韻だけを残し再び静かに時を刻み始めたがオレの心は静まる事がなかった。
マリナが和矢の部屋に向かってからすでに一時間が経過していた。
二人への不安や疑念があるわけではない。それでも胸が詰まるようなこの焦れる思いは確かに嫉妬だ。マリナの存在する全ての時を支配していたいという己の欲深さがオレの理性を飛び越え心を乱す。


内線電話をとり治療室のナンバー「0」「5」「2」と押していく。
しかし最後の「1」を押す手前で手を止めた。
電話をかけたところでどうするのだ。
マリナにすぐに戻るように言うのか?
それとも治療室の者にマリナを連れて来るように指示を出すとでも言うのか?
……オレは静かに受話器を置いた。
そして再び時計に目をやる。
ため息をついたその時、ドアが開く音が聞こえた。
やっと戻ったか……。


「ただいまーシャルル。ねぇフルーツ持ってきたんだけどあんたも食べない?」

マリナはフルーツの入ったクリスタルの皿を手に持ち、リビングに入ってきた。
マリナはその皿をテーブルに置くと丸くくり抜かれたメロンを一つ摘んで口に放り込み、幸せそうな顔をする。
まったく人の気も知らないで呑気なものだ。

「マリナ、行儀が悪いぞ」

「ほら、あんたも食べたら?和矢のとこから貰ってきたのよ。すっごく甘くて美味しいわよ。あ、でもこれ、元はと言えばあんたの家のだけど……」


はにかむ笑顔に吸い寄せられるようにマリナに近づきメロンの香る唇に口づけた。
甘い香りと共にマリナの吐息が漏れ出した。だが次第に息苦しくなってきたのかマリナはいつものようにオレの腕をぎゅっと掴んできた。この降参の合図にそっと唇を離してやるとマリナはぷはっと息をする。


「い、い、いきなりキスしないでよ。ドキドキしちゃうじゃない」


マリナは照れたように俯いたが焦らした君が悪いと言わんばかりにオレはマリナの顎を摘まみ、上向かせた。


「ずいぶんと焦らされたからね。
オレもまさかたった一時間でこんなにも気持ちが育つとは思っていなかったよ」


オレが何を言っているのか分からないといった様子のマリナに覆いかぶさるようにして唇を重ねた。より深く、より熱く。
再び降参の合図をうけて僅かに唇を離してやるとその隙にマリナが慌てて抗議をしてくる。


「ちょっと、シャルル?!待って。一体どうしたのよ?」


騒ぎ立てるマリナを抱き上げてリビングをあとにした。


「嫉妬は恋を燃え上がらせるって事だよマリナ。もうキスだけじゃ止められそうにない」




fin