きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

夢から覚めて13


先日のアングージュ公爵との会食をキャンセルしたおかげで今夜の公爵邸で開かれるパーティーへの参加は避けられなかった。

こんな時でもオレはアルディの名を背負わなければならない。気が向かないまま身支度を整えていく。
玄関ホールに降りていくとドレスアップしたジルが待っていた。
光沢のあるグリーンのドレスは落ち着いた色合いでありながら角度によってグラデーションが変わり華やかさも魅せていた。髪はアップにまとめられ自分の魅力を知り尽くしたジルの完璧な装いだった。今回のパーティーは同伴が必要だったがマリナを表舞台に引っ張り出して世間の好奇な目に晒す気にオレはなれなかった。今夜は少し顔を出すだけだ。
煩わしい挨拶もくだらない会話にも全く興味がない。
オレは無言のまま待たせてあった車へと乗り込んだ。
マリナは今ごろどうしているだろう。
そんな事を考えながら車窓を眺める。




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パーティーへの参加を済ませると早々にアングージュ邸を後にした。
やはり大勢を相手に話すのはどうにも疲れる。天才だと好奇の目に晒され、己の価値を高める為にアルディの名に寄ってくる低俗な者たち。
こんな世界にマリナを巻き込んでいいのだろうか。人を疑うことを知らないマリナはコイツらの恰好の餌食になりそうだ。身を守る術を知らない小鳥のようなマリナがマリナらしく居続けられるのだろうか。


「今夜は私ではなく、マリナさんをお連れになれば良かったのではないですか?フランス語の良い勉強にもなりますし。屋敷内ではどうしても日本語が通じてしまうので甘えが出てしまいますものね。


ジルに声を掛けられている事に気付き意識を現実へと戻した。


「マリナはフランス語の勉強は辞めるそうだから無用な心配だったな、ジル。」


目を見張るジルにオレは違和感を感じた。
「ここへ来る前にもう辞めると言われたよ。本人がやらないと言うなら仕方ない。」

ジルは胸の前で手を組みオレに向き直って言った。

「まさか…マリナさんから薬の話はされてませんか?」


「薬?ジル、知っている事を全て話せ。」


屋敷までのいつもの道のりがとても遠く感じられた。この耳で確かめなければならない。マリナの口から真実を聞かなければならない。
逸る気持ちを持て余しながらジルの製造した抗体についていくつか質問をしていく。すでに1日が経ち体外へ排出されているはずだ。
マリナの寝つきの良さはイヤと言うほどあの時思い知らされていた。昨夜もワインの酔いと単に寝つきの良さだとオレは疑いもしなかった。


「抗体の構造式は?ベンゾアピン系を使用したのか?代謝酵素CY1A43を参考にしたのか?純度含有率は?」


ジルの立場で得られる情報から薬を生成するとなるとこの辺りが妥当か。
純度は低めであれと願う。


「23%です。」


よし、問題はないだろう…。


玄関先に車が滑り込むようにして止まるとオレはドアを開け放ち駆け出していた。マリナの部屋をノックしたが返事がない。寝ているのか?
迷う事なく中へと入った。
明かりが煌々とする中、机にうつ伏せになって眠るマリナがいた。
薬のせいか、いやそれはないはずだが。
緊張感が途切れフッと可笑しくなった。
まったくマリナにはオレの全てが握られているようだ。愛おしい女性に何度となく寝顔だけ見せつけられ、まるで理性を試されているようだ。
ベットに運ぼうとマリナを抱き上げた瞬間、オレは動けなくなった。






つづく
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みなさん、こんにちは!
今回の薬についてですが、テキトーです(笑)作ったりしないで下さいね。
このお話もあと少しで最終話となります。ちなみに私のフランス語学習は一進一退といった感じですが来春、出来たら検定試験を受けようと思ってます。
まずは5級、いけたら4級を目指します。
なのでこの話が終わり、3万HIT記念を書き上げたら少しペースダウンの予定です。