モンドフォール家があるのはイングランドのたしか南西部の古都グラストンベリーだ。あの辺りは古いレンガ造りの建物や長閑かな田園風景か広がるいかにもカントリーといった小都市だ。
その伯爵家にアルディがクレアシオン=レガリアを手に入れるためだけに縁談を持ちかけたとは思えない。
アルディ家にとってはそれほど魅力がある家柄とは思えないからだ。
それならアルディの分家との縁談でも十分なはずだ。
扉をノックして執事が入ってきた。
フライトの準備が出来た事を知らせに来たようだ。
「一件電話をする。その後すぐに出発すると伝えておけ。」
スーツの内ポケットからマリナ専用の携帯を取り出した。マリナにも同じ物を持たせてある。
いつでも掛けてきて構わないとオレは言って渡したが今まで一度も掛けてきたことは無い。
仕事の邪魔になると思って気を使っているのか、さして話すこともないだけなのか。マリナのそういう欲のない所がオレは不満でもあった。
もっとわがままを言えばいいとさえ思うほどだ。彼女がオレに言うわがままと言えば食事に関してだけだ。
全く欲のない子だ。
マリナが欲しいと言えばオレは何としてでも手に入れずにはいられないほど君に夢中だと言うのに。
プップップッ…
いつでも持ち歩くように言っておいたがマリナは出ないな。
もう一度掛けてみたが、やはり出なかった。
パリを出発してまもなく水平飛行に入るとオレは機内後方のプライベートルームへと向かった。
携帯を取り出し再びマリナに掛けてみたが今度は電源が入っていないのか、呼び出しもしなかった。
充電し忘れて切れているのか…。
それとも縁談の事が何か関係しているのか。
「日本にいる時、1人で泣いていたんだ。オレは何度も見かけた。」
ガイの言葉がよみがえる。
オレの知らない所で涙を流していたというのか!
あの時日本に残りたいとマリナに言われた時は里心でもついたのかと思い、残してきたが、無理にでも連れ帰るべきだったのかもしれないな。
「シャルル、入ってもいいですか?」
「ああ、構わない。」
「失礼します。クレールの身辺を調べました。彼がイギリスへ渡りモンドフォール家との縁談を進めていた事が分かりました。それから私はまだシャルルに話していない事があります。」
ジルは一瞬オレから目を反らせた。
何か言いづらい事があるのは分かった。
「なんだ?」
「はい。日本に発つ日に私はマリナさんへお願いをしました。
シャルルが日本に行かないようにマリナさんから説得して欲しいと頼みました。
アルディ家にとってクレアシオン=レガリアがどれほど重要な物であるか、それを果たせない時にはシャルルは当主を追われる事になると話しました。
差し出がましい事をして申し訳ありませんでした。」
たしかにジルから聞いたとマリナは言っていた。それは大した事ではない。
だがジルも縁談の話はその時は知らないはずだ。
「君から頼まれた事はマリナから聞いていた。今回の失言は目を瞑ろう。
それよりマリナが縁談話を知っていたか?だ。」
ジルの目に強い光が走り緊張した表情になった。
「縁談についてマリナさんはご存知だと思います。
マリナさんとクレールが使われていない部屋から出て来る所を見た使用人がいました。ちょうど日本へ向かう直前です。
おそらくその時にマリナさんの耳に入ったのではないかと思われます。」
くそっ!
マリナにも根回ししていたのか!
「リオンヌ家と言えば親族会の中でも長老に当たる人物、クレールの父ロラン・リオンヌ。
彼が裏で動いているのは間違いありません。」
親族会の長老か…。
それほどまでにクレアシオン=レガリアに執着する理由があると言うのか。
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みなさま、あけましておめでとうございます🎍
今年初の更新をやっとすることが出来ました。待っていて下さった方、お待たせいたしました😊今朝、久しぶりにシャルルと向き合い創作する事ができました。
出来たてホヤホヤ(古い?笑)です。
今年もシャルルの事を想い創作を続けていきたいと思ってます。
どうぞみなさま、今年もお付き合いよろしくお願いします🌟
今月はシャルルの誕生月なので何か出来たら…と考えてます。妄想が膨らみまくってくれるといいのですが😅
まだ何も閃いてません💦
何かご要望あれば✨期待に添えるとは限りませんが…😱