きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

夢から覚めて7


「時間が取れない時もあるが明日からオレが教える。読み書きまでしたい?」


シャルルはポケットからメモを取り出してあたしにいくつか質問しながらサラサラと何かを書いていた。そしてふと手を止めてあたしに視線を向けた。


「なぜ急に勉強しようと思ったんだい?
今だって特に不便はないだろう。」


やっぱりそこにたどり着くよね。
シャルルを驚かせようと始めた勉強だけど最近はこのままパリで暮らすなら必要かなって思い始めていたの。
当たり前だけど何もかもがフランス語なのよ。お屋敷から一歩外に出れば完全にそこはフランスで…。
そして、目にする物すべてが分からないって事に気付いたの。
今までは何気なく眺めていたパリの景色が、あたしとシャルルとの距離を物語るように遠く感じた。
ついこの前も執事さんにお願いして画材屋さんに連れて行ってもらったの。もちろん執事さんは用意してくれるって言ってくれたけどトーンもついでに自分の目で見たかったの。だから一緒に行ったんだけどあたしは一人でペン先一つ買えなかった。
マンガを描く時に使うペンにも色々あってあたしが欲しかったのはGペンと言って力の入れ方で太線や細かい線が描けるもの。表示は当然フランス語だし、お店の人もフランス語しか話せないしで結局、執事さんに通訳してもらって見つける事ができた。
あたしはお屋敷から出たら一人じゃ何も出来ないんだなって思ったの。
シャルルが忘れられなくてパリに来て一緒に暮らして、はい、終わりじゃないもの。だけどこのあたしの小さな一歩はシャルルにとって重くはないか不安だった。


だから…。


「一言二言喋ってあんたを驚かせたかっただけよ。」




こんな風にしか言えなかった。






つづく