きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の証50000hit感謝創作10


セーヌ川沿いをしばらく歩いて行くとアルディ家の車が二台、ハザードランプを点けて止まっているのが見えてきた。
あたしと和矢を囲むようにSPの人達が周囲を取り巻き、物々しい雰囲気を辺りに振りまきながら車に近づく。
あたしと和矢、クロードは前の車に乗り、後ろの車にはSPの人達が乗り込んだ。
今になってあたしはここに来たいと言った事を少しだけ後悔していた。だってパリ・プラージュの会場の一部を貸切にするとかSPの人までついて来るとは思ってなかったんだもの。こんなに大げさになるとは思ってなかった。
彼らもまさかスーツ姿でビーチに立つとは思ってもいなかったはずよね。
シャルルとどこかへ出かけるっていうのはこういう事なんだ。シャルルは特別な人間で二人きりでぷらっと出かけられない立場なんだと改めて思った。だからシャルルはアルディ家の所有するテトナ島へ行こうって言ったんだ。きっとそこならここまでの警備は必要なかったんだ。SPの人達もいい迷惑よね。あたしは自分の考えの甘さを痛感していた。

「マリナどうかした?」

あたしがあれこれと考えていると隣に座っていた和矢が気遣うようにあたしを覗き込んできた。
あたしはとっさに何でもないと言ってごまかした。


「アイツもすぐに戻ってくるさ」


シャルルが一緒じゃなかったことであたしががっかりしてるって和矢は思ったんだ。和矢の優しさが心に沁みる。
こんな風に人の優しさに触れたのは久しぶりだった。
アルディ家の人達はみんなとっても良くしてくれる。身の回りの世話も部屋の掃除も何から何まで行き届いていてあたしは何不自由なく暮らしている。だけどそれは彼らにとってはあくまでも仕事であってシャルルとの契約から発生していることに過ぎない。
あたしはあの家ではシャルルの付属品のような物で全てはシャルルに向けられた事の延長なんだと思う。


パリに来て二ヶ月、あたしはシャルル以外の人とあまり会話をした事がない。
欲しいものや頼み事があるのを伝えるだけ。パリに友達がいるわけでもないしあたしと関わりがある人は誰一人としていないんだから当たり前なんだけど。
そんな事を考えているうちに車はアルディ家の門をくぐり玄関前へと着いた。


「マリナ様おかえりなさいませ」

執事さんが出迎えてくれた。
あたしは「ただいま」と言ってお屋敷の中へ入り、和矢が付いて来てない事に気付いて振り返った。


「お久しぶりです、和矢さん」

「和矢さんがこうして訪ねていらっしゃるのは何年ぶりかしら?昔はよくシャルル様と一緒に遊んでおられましたね」

「お召し物が濡れてしまってますわ。すぐに着替えをご用意しますね」

執事さんやメイドさん達が代わる代わる和矢に声を掛けていた。みんな和矢に会えてとても嬉しそうだった。
和矢もお世話になりますと言いながら一人一人に応えていく。
小さな頃からこの家に遊びに来ていた和矢をこの家で働く誰もが知っているのは当然だった。


「マリナ、オレちょっと着替えてくるからまた後でな」


そう言って玄関ホールを抜けてゲストルームのある廊下へと消えていく後ろ姿がやけに眩しかった。





つづく