きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

夢から覚めて3

繰り返されるだけの日々をただ送っていたオレの人生に再び色彩をもたらしたのは運命の人だった。

「マリナさんがいらっしゃってます。」

身を裂かれる様な思いで彼女に別れを告げてからどれほどの時が経っただろうか。今さらどうしたと言うんだ。
和矢に何かあったか、それとも…いや、期待などしない、夢はすでに終わっている。望んでもこの手に出来ないのだと知ってしまった。
オレはジルに乱れた心の内を悟られないように平静を装った。これほどの労力が必要だったのかと思えるほどだ。

「ジル、君が要件を聞いて彼女が何かに困っているようなら力になってやってくれ。」

極めて冷静に言うとジルは「しかし…」と言いかけて言葉を飲んだ。
オレの決定が全てだからだ。
オレは再び机上の書類に視線を戻そうとした時、

「私の勝手な判断でマリナさんをこちらにお連れしています。すでに扉の向こうでお待ちです。」

扉一枚を隔てた向こうに彼女の存在を感じて胸が高鳴る。
冷静さを欠き、判断力が鈍る。

「何だと?」

「私はこれから研究所へ向かわなければいけないので失礼します。」

ジルは頭を下げると扉へ近づき、待たせていたマリナを執務室へ招き入れ、自らは退室していった。
ジルが研究所に何の用があるというんだ。全くお節介な秘書だ。


あれから数年が経っていた。マリナは少し背が伸びていたが以前と何も変わりはなかった。眩しいばかりの彼女の存在に目が離せずにオレはいた。
マリナはもじもじしながら「元気?」
とオレに声を掛けてきた。

「ああ……。…君は?」

オレは立ち上がり机を回って扉の前にいるマリナに吸い寄せられるかのように近づいていった。手を伸ばせば届く距離にマリナを感じて体中の血が沸き立つようだ。愛しているから手放した。決して嫌いになどなれない。一生大切にしまっておきたいオレの想いだった。
だが間違えてはいけない。二度と身を裂かれる様な想いはしたくない。オレ自身が壊れてしまう。
オレは最短で彼女の目的を確認する必要があった。長く過ごせば辛くなるばかりだからだ。

「何があった?」

これだけで十分だろう。彼女の事情を聞き、解決してやればそれで良い。


すると彼女は瞳を潤ませ涙を流し始めた。予想外の出来事に心を乱される。
愛しい女性が目の前で涙を流す光景にオレの理性は粉々に砕け散る。
自分でも驚くほどに自然と彼女へと手を伸ばしていた。

「とうしたんだ、マリナ…」

オレの腕の中にいる彼女は声を震わせて言った。
それはまるで夢の中の出来事のようだった。

「あんたを忘れる事ができなかった。」




つづく