きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

la douce pluie 31

私たちを乗せた車は静かに本邸へと走り出した。車内は快適な温度に保たれている。私だけ…そんな複雑な思いを抱えながら窓の外を眺めていた。
ミシェルを追いかけて走った景色は車から見ていると流れるように過ぎていく。



ミシェルを強制移送させたくないばっかりに一緒に行くと私は言った。そしてミシェルはそれを聞いて心から私に来て欲しいと思ったはずだわ。
私にも選ぶ権利があると言いながらミシェルはあの時、私に来てくれと確かに言ったわ。
それなのに私一人だけこうして車に乗りアルディ家へと戻っている。ミシェルだけ雨の中に置き去りにしたまま…。





本邸はすぐに見えてきた。あれだけ走ったのにあっけないほどに近かったんだわ。ミシェルはどこまで行ってしまったんだろう…そんな事を考えているうちに車は玄関前に止まった。
玄関ホールにはジルや使用人達が慌てた様子で出迎えにきた。

「おかえりなさい、シャルル、マリナさん。」


ジルはいつもと変わらない笑顔を浮かべていた。
たぶん私がミシェルを追っていった事をシャルルに隠しておいてくれようとしているんだわ。心配していた素振りなんて微塵も表に出さない。ジルにも余計な心配をかけてしまったんだわ。
後先考えなかった自分の行動を私は反省した。
シャルルは青灰色の瞳を鋭く光らせジルを見据えた。それは真実を見極めようとする瞳だった。


「ジル、ミシェルの件は保留だ。
奴が屋敷に戻ったら地下の特別室に連れて行け。オレが指示するまで出すな。」


「どういう事ですか?!」


ジルは驚きを隠せない様子だった。
そして私もシャルルの言っている事がよく分からなかったの。
だって逃げ出したミシェルが戻ってくるとシャルルは思っているの?
孤島に連行されると思って出て行ったのよ。帰ってくるはずないわ。


「強権発動とは報告義務違反だな。」

「申し訳ありませんでした。」

ジルは反逆罪の場合は当主への承認は要らないって言ってたけどどうなっているんだろう。


「まんまとミシェルに乗せられたようだな、ジル。この話はまた後にする。
オレはマリナを部屋に連れて行く。」


ミシェルが孤島送りになりかけて逃げ出した事をシャルルは知っていたんだ。
でも帰って来るのを待っているよりは探しに行った方が早いわ。いくらミシェルだってまだそんなに遠くには行ってないはずよ。


「ミシェルを待つより探しに行った方が早いんじゃない?」


私がそう言うとシャルルは苛立たしげに私を見た。


「マリナ、そんなにミシェルが気になるか?」


そう言われて私はハッとした。
シャルルがどんな思いでいるのか私は考えていなかった。


「とにかくオレの部屋に行こう。ミシェルよりもまずは君の着替えだ。」


私は最低だわ。シャルルはずっと私の事を気に掛けてくれているのに私はミシェルの心配ばかりしていた。
シャルルに手を引かれて居室へと向かった。少し前を歩くシャルルの表情は見えなかった。





つづく