その日シャルルは本当にある意味、私を一日中放さなかった。
私は目を覚ますと、すっかり着替えてパソコンに向かっているシャルルが目に映った。ベットから起き上がってシャルルに近付いた。
「シャワーを浴びておいで。その間にこれを終わらせてしまうよ。これが終われば今日は完全に休みになる。」
熱いシャワーを浴びて用意されていたバスローブを羽織り出て行くと、私のクローゼットから運び込まれた洋服達が並べられていた。シャルルがメイドに用意させたんだわ。
着替えを済ませるとシャルルも仕事が片付いた様子だった。
「車を着けてくれ。運転手は結構。自分でする。」
執事に内線電話を掛けると「さあ、出かけるよ。君に見せたいものがあるんだ」
向かった先はパリから北東へ約1時間程のシャンパーニュ地方の町ランス。世界遺産で有名なノートルダム大聖堂に来ていた。それは街中に突如現れた荘厳なたたずまいだった。
「ここでオレ達の式を挙げる。今日は下見と言ったところかな。
観光客もたくさん訪れる場所だ。その昔、フランス国王の即位式などが行われた歴史を持つ。大聖堂内のマーク・シャガール作のステンドグラスは素晴らしい。」
そう言っていつか訪れる2人の挙式を想像し、白金色の髪を揺らして振り返り微笑むシャルルはなんとも美しく、観光客の注目を一身に集める事となった…。
一度は手放した愛を再び私たちは始めた。華麗の館であの時シャルルの言った言葉が思い出された。
今、現実にこの地に二人が存在していた…。
それからシャルルは少し足を伸ばしてランス美術館にも立ち寄ってくれた。
「ここはルイ15世時代のロココ様式の貴重な建物で、歴史的建造物に指定されているんだ。ルネサンスから現代美術までの多岐に渡ってコレクションされ多くの観光客が訪れる場所なんだ。」
この建物自体もロココ調でとっても素敵だったわ。館内を見て回ってシャルルの解説付きだったけど、難しい説明に私はついつい聞き流してしまっていたの。
でもシャルルはそんな私を見て微笑んでいた。「説明いらずかな?」と言うだけだった。
夕方にはアルディ家へと戻ってきた。私はすっかり車で寝てしまったけど、これまたシャルルは機嫌も良くホッと胸をなでおろした。
屋敷の中へシャルルに続いて入ると玄関ホールにはなんとミシェルがいたのよ!
私は二人一緒の所をみるのは、あの時以来で、しかも本邸内でミシェルに会うなんて想像もしていなかった。
「ミシェル、早かったな。」
「ジルから急ぎと言われて私物はまだなんだが、とりあえず来たよ。」
私は話が見えずに二人の様子を伺っていると、ミシェルが説明してくれた。
「今朝、急に別邸に来たジルに夕方までに本邸へ移転するようにと言われたんだ。いきなりだぜ?しかも拒否権なしだ。」
ミシェルは両手を上げて肩をすくませてみせる。
「マリナはオレとミシェルが本邸で暮らす事を望んでいる。ママンがその昔、望んだように…。だからミシェルを此方へ呼び寄せた。」
シャルルはそう言うとミシェルに向き直って話始めた。それはまるで鏡に向かって話してるような不思議な光景だった。
「ミシェル、今まで通りアルディの仕事をしてもらうが、今の補佐程度ではなく、ジルと共にアルディの中心となり、力を発揮してもらおうと考えている。
オレの片腕にならないか?」
シャルルの提案に少し驚いた様子のミシェルだったけど、ふっと挑戦的な笑みを浮かべて言った。
「暇つぶしになりそうだし、兄上様の提案なら、決定なんだろ?
断る理由も見当たらない。」
シャルルもフッと自嘲的に笑った。
私からの贈り物がシャルルの手に…。
そしてシャルルとミシェルの関係がやっとここから始まる。
心をこめて…シャルルとミシェルの幸せを願ったママンも喜んでくれてるよね。
fin
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最後まで読んで頂いてありがとうございました。
思っていた以上に長い話になってしまいました(^_^;)
原作ではシャルルとミシェルは争いましたが、それぞれの生い立ちを知り、相手もまた苦悩したんだと分かり合うのもいいかなって思いました。
この二人を溶け合わせるのは彼女しかいないかなって思い、マリナちゃんに絵本を描いてもらいました。
表現力の乏しい私の創作を見てくれてる方がいる事をアップする度に感謝しております(*^_^*)