きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

la douce pluie 20

寝室に響き渡るシャルルの携帯の呼び出し音。プルップルッ…。

シャルルは携帯を取り出すと液晶画面に視線を落とす。
急いで歩き出し私から少し離れてから電話に出た。


「私だ。……5分後に掛け直せ。」


それだけ言って携帯をしまった。仕事の電話だったみたい。シャルルの表情は固く緊張感が辺りを包む。

「シャルル、何かあったの?」


「いや、何でもない。」


何もないわけがない。シャルルは否定したけど私は気になった。さっき緩めたネクタイだって締め直しているし、ミシェルの所へ行くのかと思っていたけどどうも違うみたい。
ミシェルの部屋に行くならわざわざネクタイをしないはずだわ。

それに電話の相手に掛け直せって言っていたわ。つまりここでは話したくないって事よね。私には聞かれたくない話なんだわ。


「シャルル、何処に行くの?」


「仕事だよ。どうした?マリナがそんな事を聞くなんて初めてだな。」

さらりと返ってくるシャルルの言葉に私たちの間に隠し事や悩みが何もなかったかのような錯覚をしてしまう。
でもシャルルはわざとそうしているんだって気付いた。何も話そうとしない私の負担にならないように今はいつも通りの調子で話してくれているんだわ。



「電話の後、シャルルがいつもと違うから気になったのよ。」

シャルルの視線に私は緊張した。じっと見据えて私を絡め取るようだった。私は息を飲んでシャルルの言葉を待った。


「いや、何もないよ。」


「でも、シャルルの顔、怖いわ…よ。」


感情を抑え込むように幼少期から厳しく躾けられてきたはずのシャルルが隠せないぐらいの何かがあったんだわ。
シャルルは気持ちを鎮めるかのように目を瞑った。そしてすぐにいつものシャルルに戻ると優しく微笑んで言った。



「こんな時まで仕事かと思っただけだよ。君を一人にするのが心配なんだ。」


シャルルは私の肩に手を伸ばすと横になるように促した。


「さあマリナ、少し寝た方がいい。オレは今夜、遅くなるかもしれない。なるべく早く帰るつもりだが、もしオレが留守の間に何かあったらメイドをすぐに呼ぶんだよ。これを押せばすぐに来る。」


私の枕元にコールボタンを置いてくれた。これはシャルルが普段から側に置いている物だった。
緊急の時に使うものだって聞いたことがある。実際に使ったのを見たことは一度もない。ナースコールみたいなものかしらね。


「うん。」

シャルルの背中を見送って私は一人残された部屋で考えていた。
さっきのシャルルは本当に心配してくれていただけなのかな。

仕事に向かったシャルルはきっと今日はミシェルの部屋には行かないはずだわ。
二人が話をするとしたら明日以降ね。
その前に自分からシャルルに写真の話をしようと思う。
あのキスに深い意味はない。
これでシャルルに隠し事がなくなる。
胸の支えが取れていくようだった。キスの写真を買い取る必要もなくなるわ。
シャルルに先に話してしまえば見せられたって問題ないもの。

そこまで考えていて思ったの。
あんな写真を見て本当に何とも思わないだろうか。いくら私を黙らせるためにミシェルがしたキスだとしても気にならないって言い切れるかしら。
私だったら絶対に動揺する。ううん、動揺なんてものじゃない。もの凄く嫌よ。シャルルが他の女の人とキスをしているのなんて見たくもない。

深い意味がなくてもキスはキスなんだってこと。今まで気付かなかった。
私はシャルルを傷付けたくないと言いながら全然シャルルの気持ちになって考えていなかったんだわ。





やっぱり話せない……。









つづく


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みなさん、こんにちは(^o^)

いつも訪問ありがとうございます
久しぶりに更新できました。4月に入って仕事が忙しく妄想する時間もないまま疲れ切って爆睡の毎日でした(-。-;
少しずつですが更新していきたいと思います。

言わなきゃ、けど言えない…
マリナはまだ悩んでます