きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

la douce pluie 17

部屋に戻るとさっきのメイドは部屋の掃除を済ませてくれていた。
散らかした部屋を人に片付けてもらうのはいつになっても慣れないものね。
ありがとうって私がお礼をいうと彼女は
驚いた顔を見せた。

「お礼だなんて、これも私の仕事なので当たり前の事です。マリナ様のような方は初めてです。
どうかシャルル様と幸せになって下さい。あれからメモの事でシャルル様がお心を傷めているのが見ていられなくて。マリナ様への不信感からメモを無断で持ち出した事への処分は何でもお受け致します。」


彼女は深々と頭を下げて私に謝ってくれた。きっと日本から来た得体の知れない私に不信感はもともとあったはずよね。それがマルクの連絡先を隠し持っていたら疑いたくもなるわよね。


「シャルルを大切に思ってくれて本当にありがとう。あなたの言う通り隠していた私がいけなかったんだから謝る必要はないわ。もちろん処分なんてしないわ。
それにねあなたが渡したのはミシェルだったのよ。私もマルクの事はシャルルに話すつもりでいるの。あなたにまで心配かけてごめんなさい。」


彼女は涙を浮かべて何度も謝っていた。
それだけシャルルを心配していたのね。
早くマルクの事を話さなきゃいけないと改めて思った。


彼女が部屋を出て行った後を追うようにして私は玄関へと向かった。
さっきのミシェルとマルクの事が気になって仕方がない。


「マリナ、ちょっと。」


マルクと話が終わったミシェルは私を自分の部屋へと連れて来ていた。

廊下で呼び止められた後、私の腕を掴むとグイグイ引っ張って自分の部屋へと押し込んだのよ!
何するのよ、痛いじゃない!って文句を言おうとした私は固まってしまった。もうまるで目の前が真っ暗になったようで、背中を冷たい汗がつたう。

「ど、ど、どうしたのよ、これ?」

目の前にはミシェルと私がキスをしている写真があった。
ミシェルはサッと内ポケットへしまい真剣な表情になった。
目は鋭い光を放ち、挑発されて沸き立つ感情を抑えるのに必死のようだった。



「これをマルクが持ってきた。いくらで買い取るか?それが用件だった。」

内ポケットを指しながらミシェルは更にマルクとのやり取りを教えてくれた。

「あくまでもこれはコピーだ。
オリジナルは奴が持っている。なぜこれを持っているのか分からないが、調べるにしろ取引するにしろこの事はシャルルの耳に入る事になる。
だがオレが無理矢理したキスだ。マリナは何も悪くない。オレからシャルルに話すから君は余計な事は何も話すな。いいね?」


ミシェルの言っている事が分からないでいた。なぜマルクが買い取りの話をしてきたの?それにシャルルに話すって言ってもどう説明するのよ。
私はマルクとペットショップで会った時に渡されたメモを誰にも言わずに内緒にしてしまった。そして密かに電話を掛けた。それはマルクがと言うよりはマックスが気になったからだった。
シャルルにその話をしようとした矢先の出来事だった。


「どうしてっ!?なぜなの?
マルクがどうしてっ!?あれはミシェルが消したって言ってたよね!?
犯人は捕まえたんじゃないのっ?!
買い取るってどういう事?!マルクはその為にここに来たの?
まだ、シャルルに話してないのよ。
私は、自分から話したい。
シャルルを傷つけたくないのに、どう、し、て、こん…なこと…」




私は興奮のあまり次から次へと浮かぶ疑問をミシェルにぶつけた。
悔しくて涙が溢れてきてミシェルが滲んで見えてくる。次第に呼吸が苦しくなってきて私は胸に手をあてた。
息苦しくて、苦しくて立っていられない。突然襲う息苦しさに私は恐怖した。



「どうしたっ?!…マリナっ!」


ミシェルは私をさっと抱き上げると近くにあったソファへと寝かせた。


「落ちつけ!ゆっくり息を吐くんだ。」


そういいながらブラウスのボタンを外し呼吸がしやすくすると私の鼻と口を両手でそっと囲い、ゆっくり呼吸をするように繰り返し言いながら私を落ち着かせてくれた。

「そうだ、ゆっくりと吐いて。マリナ苦しいだろうけど大丈夫だから。落ち着いて、すぐに楽になる。」


ミシェルの優しい口調に私は次第に誘われるようにゆっくりとしたリズムで呼吸をし始めた。それまでは凄く苦しいのに息が吸えない事に焦りを感じていた。このまま死んでしまうんじゃないかと思うほどの恐怖が私を襲う。
次第に息苦しさがなくなってくるとミシェルはホッとしたような表情を見せて私から手を離した。



過呼吸は過度のストレスや興奮状態で起こる。血中の二酸化炭素濃度が減少するのが原因だが息苦しさに酸素を過剰に取り込もうとしてしまう。更に苦しくなるといった悪循環が起こり意識混濁なども起こりうる。対処法は二酸化炭素の排出量を抑えることだ。だからあまり興奮するな。また苦しくなるぞ。」



白金色の髪を乱して私を心配そうに見つめる青灰色の瞳がそこにあって、まるでシャルルのようだった。


「うん。ありがとう、ミシェル。あんたもお医者さんみたい。あんたも何でも知っているのね。苦しくてどうなるかと思ったし本当に怖かった。これも嘘をついていた罰なのかな。」


私の言葉をじっと聞いていたミシェルの表情は次第に硬くなる。
返事をしないミシェルに私はだんだん不安を感じていた。ミシェルの瞳に私が映っていた。
いきなり私の両手を掴んだ。驚いて私は手に力を入れたけどさっきの事もあって力が入らない。両手をソファに押し付けられて身動きがとれない。


「オレがシャルルに見えた?
君までもやっぱりシャルルの影をオレに落とすの?オレにアイツを重ねるなよ。
オレはシャルルのコピーじゃない。
オレはミシェルだ。オレはマリナが…マリナが…」


ミシェルをそんな風に思った事はない。シャルルの影だなんて思ってない。
なに?私が何よ?
ミシェルは怒ってるの?
でもとても悲しい目をしている?





「ミシェルっ!離れろっ!!」



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オレはマルク・バルトリの面会申請の一報を執事から受けると急いでアルディに戻った。
マリナへの面会など認めるはずがない。
屋敷に着くと肝心のマルク・バルトリは帰った後だった。ミシェルが対応したと報告は受けていた。
しかしミシェルもマリナも見当たらない。不安が過る。執務室から全館内警備システムにアクセスすると、ミシェルの部屋へ連れられるマリナが映し出された。


執務机を飛び越え、オレは駆け出していた…。ミシェルっ!どういうつもりだ!







つづく

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みなさま、こんばんは!
そろそろシャルルが見たいですか?の呟きに参加して下さりありがとうございました
ほんの小さな呟きでしたが心の声が大きかったかな?言わせてしまいました


そしてシャルル登場です。
怖い…( ̄◇ ̄;)