きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

la douce pluie 23

マルク・バルトリ23歳、フリージャーナリスト。
政界、財界のスクープ記事を書いてきた人物だった。しかしこれまで大きな記事を扱ったことはなく、小さなスキャンダルで小銭稼ぎをしてきた男だと報告書には記載されていた。


私はマルクの基本データに目を通し終わるとパソコンを静かに閉じて窓辺に向かい外を眺めた。
私が半年ほど前にチューリヒへ向かったのはセーヌ川沿いのポプラ並木の紅葉が始まった頃だった。
チューリヒはスイス最大の都市でちょうどスイス中央部にありチューリヒ湖の北西端に位置している街である。
このチューリヒ市内と空港感の再開発が続く注目のグラットパーク地区にあるホテルを買収しリニューアルオープンするまでが私の仕事だった。そして無事にオープンさせアルディに戻ったのはつい先日の事だった。半年ぶりのアルディ本邸だった。
ようやく春が訪れアルディ家の庭にはマリナさんの希望で桜の木が植えられている。
薄く淡いピンクの花びらは芝生の上に横たわりすでに所々緑の葉が芽吹き出していた。儚い花は短い時間の中で精一杯花を咲かす。だからこそ人の心に染み入るのだろう。
扉をノックする音で現実へと戻る。

「どうぞ。」

私の声に反応して現れたのはブリスだった。彼はマリナさんからの発信記録が報告された後マルクの行動調査を担当していた情報員だった。

「失礼します。ジル様。」

一歩部屋に入ると私に向かって姿勢を正した。ブリスはケルト系フランス人で黒髪に茶色の瞳をしている。
とにかくブリスから詳しい話を聞く事にした。


「マルク・バルトリはチームを組み活動してます。おそらくマルクは街で見かけたミシェル様に目をつけ、そして近づいたのだと思います。ペットショップでの出会いも偶然ではないと思われます。」






あの日。ミシェルとマリナさんがマルクのアパルトマンを訪れた日、見張りを続けていたブリスから私に電話があった。

「ジル様、ご相談があります。」

これまでの経緯、そしてマルクのアパルトマンに二人が現れ、写真が撮られたこと。ミシェルが追って行った相手は捕まえる事が出来たが他の場所からも二人の様子は撮られていたらしく全てを回収するのは不可能だったらしい。


「シャルルへの報告は私からします。マルクに何か動きがあったら全て私に報告するようにお願いします。写真の事は私からシャルルへ伝えておきます。」

ブリスは自らも二人のキスを目撃した上に何者かにスクープされた事をシャルルに報告できずにいた。
まさかマリナさんとミシェルが…。


マルクの誤算はミシェルをシャルルだと思い違いしていたことだった。
それが嬉しい誤算となった。
名門アルディ家の若き当主シャルル・ドゥ・アルディと恋人とのツーショットなど小さな物となった。マルクは仲間にも情報を売っていたためか複数の人間があの場に居合わせていた。
双子の弟の存在、以前当主争いで新聞を賑わした事を思い出したのだろう。
マリナさんへ近づきチャンスを狙っていた。そこへミシェルとのキス。
この大スクープは雑誌社へ持ち込めば高額の報酬は見込めたでしょう。
シャルルとミシェルの双子のマリナさんをめぐる争い。その写真は世間の注目を集めそうなものだった。
しかしマルクはそうしなかった。
なぜなら…マリナさんに買取させる事を思いついたからだった。
シャルルの恋人でありながらミシェルと行動を共にしていたマリナさんの秘密を握った事でもっと簡単にお金が手に出来ると考えた。

マリナさんならたとえ要求金額が高くても必ず用意すると見込み、マルクはアルディ家までわざわざ足を運んだ。
世間では面白おかしく騒がれる内容に違いない。そこまでマルクは考えたんだわ。




「ジルです。マリナさんとミシェルの事で話があります。」

用件だけ伝えるとシャルルは一瞬黙り込み、それから一言だけ口にした。





「…5分後に掛け直せ。」






つづく


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みなさん、おはようございます(^o^)


久しぶりに今朝、晴れ間を見た気がします
私は新年度になり職場が変わったのもあって生活リズムがなかなか掴めずにいます。更新をお待たせしてすいません
あれ?あまり待ってない?←いつものお決まりです(≧∇≦)

時間が経つと空気感やその時の気持ちに戻るまで私は時間が掛かるんですが、そこに戻り色々考えている内に寝てしまう毎日です

…と言い訳ですが(笑)
しばらくこんなペースでの更新になるかと思いますがお付き合い頂ければ幸いです