きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

la douce pluie 26

黒いファイルを手にしたジルの表情を見て私は胸の奥に鉛が支えているような重たい気分になった…。
そして言い知れぬ不安…。

ジルは再び私たちの前に座ると黒いファイルから一枚の書類を出した。


「マルク・バルトリに関する調査報告書です。それから…」

ジルは一瞬ためらいながらも写真を何枚か取り出した。そこには私とミシェルが写っているあの写真があった。
ミシェルから見せられた物と他にも二人でいる写真が数枚あってジルはそれらをテーブルの上に並べていく。


「ジルっ!これはっ?!」


ジルは私を責めると言うよりはとても悲しそうな表情をしていた。
写真を前にして私は言葉が出なかった。
私の頬を包み込みミシェルが覆い被さるようにして交わされたキス。


「シャルルから昨日、買取の承諾が出たので直ちに全ての写真を回収しました。」


そんな…。


「シャルルは知っていたの!?」


昨夜シャルルに電話で報告したとジルは教えてくれた。
二人で居たあの時の電話はジルだったんだ。全てを知ったシャルルは何も話さない私をどう思っていたんだろう。
それで今朝、シャルルの様子がいつもと違っていたのかもしれない。
少し強引なシャルルの態度を私は思い出していた。
シャルルはミシェルと私のキスを知って
何を思ったんだろう。
私は居た堪れない気持ちになった。
今すぐにでもシャルルに会って自分の言葉できちんと謝りたかった。私はさっと立ち上がりドアへと向かおうとしてジルに止められた。


「マリナさん待って下さい。シャルルにはまだこの写真は見せていません。
アルディ家にとって不名誉な物が流出する恐れがあり買取したいと言っただけです。この先もシャルルに見せるつもりはありません。ですからマリナさんもこの事は早く忘れて下さい。」


それまでじっと黙っていたミシェルが身を乗り出してテーブルに両手を叩きつけてジルを問いただした。

「シャルルには一枚も見せてないのか?!」


ジルは写真を一枚ずつ手に取りファイルへ戻しながらミシェルへと視線だけを向けた。


「当主の座を奪われアルディ家から追われるようにして逃亡したシャルルは少なからずミシェル、今でもあなたを意識しているのは確かです。それでもマリナさんの願いを聞き入れて、今こうしてあなたと暮らすようになった。
だから私はあえてシャルルには何も伝えませんでした。
もしシャルルが写真を見てしまったら一生忘れる事は出来ないでしょう。そして今の関係には戻れなくなると考えました。これは私の独断で処分します。」


シャルルは写真を見てはいない。
だけど今朝のシャルルの様子はおかしかった。何かあるのは分かっているはずだわ。それでも何も聞いて来ないのは私が打ち明けるのを待っているのかもしれない。










つづく