ジルに続いて入った部屋はさっきまで薫たちといた部屋と全く同じ作りだった。カーテンやソファなどの配色を変えてあるため部屋の雰囲気が少しだけ違っているだけだった。他にも同じような部屋がゲストルームとして使われているみたいだった。
それにしても私と2人で話したい事って何だろう。いつものジルとは何処と無く雰囲気か違っていた。
ジルの思い詰めたような、そして不安気な様子に私は戸惑ってしまった。
でも時間があまりがないのよ。
フライトの時刻も迫っているし、ガイにはすぐに戻るといって部屋を出てきちゃったからなるべく早くジルとの話を済ませたかった。
「それでジル、一体話って何?薫の兄上が危篤って連絡がさっきあって私たちはすぐに準備して日本に行かなきゃならないのよ。」
ジルがくせのないな金髪を揺らしながら振り返ると大きく息を吸い込み、意を決したように話し出した。
「マリナさん、どうかシャルルが日本に行く事を諦めるように説得してもらえませんか?」
へっ?
私から出た第一声はこれだった。
ジルが何を言っているのか分からなかったのよ。きっと私はきょとんとした顔をしていたと思う。
だって薫や兄上の心配をしているのわけでもなく、シャルルに日本へ行くことを諦めさせて欲しいってどう言う事なの?
ジルの考えてる事が理解出来ない。
「そんな事を言われても出来るわけないじゃない!どうして私がシャルルを説得しなきゃいけないの?
逆にシャルルが日本に行かないって言ったのを私に説得して欲しいっていうなら話は分かるけどね。
兄上が大変なの。危篤なのよ!
シャルルが行くのが1番良いに決まってるじゃない!?それなのに、どうして日本に行くことをあんたは止めるの?
ジル、訳を話してちょうだい。」
なぜジルはこんなお願いを私にしてくるの?いつもジルはこんな私に対しても真面目に向き合ってくれてた。
少しぐらい無理なお願いだって聞いてくれる。いつも私の味方になって助けてくれていたじゃない。
それなのにどうして…?
日本に行ったら困る事でもあるの?
シャルルでも危篤の兄上を救えないかもしれないから?
そうだとしても、ここでジルがシャルルを止めるのはおかしいわ。
いつだってシャルルの行動にジルが意見する事はなかったはずだもの。私を介してもジルの言う通りにシャルルがするとは思えなかった。
ジルは時おり私から視線を外し、心に秘めた物とせめぎ合いをしながら私の言葉を聞いていた。
そして意を決したように胸の内を静かに語り始めた。言葉を選びながら、慎重に…そして私が拒む事のないように思いを口にし始めた。
「これはシャルルのためなのです。」
つづく