きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛はそこにある…je crois 14

 
別室で待つようにって言われたものの、どれぐらい待たされるのか全く聞かされないまま私たちはこの部屋から動けずにいた。

いつ何の知らせが来るか、経過説明があるのかも分からない状態が2時間ほど経っていた。


「マリナ、あたしゃこういう思いをこれから何回させられるんだろうな…」


苦しげに薫が口を開いた。
そうだよね…薫はあの日から愛する人が死に近い場所に身を置いている恐怖に常に立たされているんだ。
それは私には想像もできない辛さよね。
どんな言葉を掛けたらいいんだろう。


「わりぃ。こんな事を言われたって返事に困っちまうよな。おまえさんがいると弱気になっちまうんだ。
シャルルが大丈夫って言うなら信じて待つしかないよな。」


薫を励ましてあげたかった。
私は側にいてあげる事しか出来ないけど話ならいくらでも聞けるわ!


「私ね、兄上が危篤って聞いた時は正直あんたがパリにいる事を悔やんだの。だって12時間も掛かるわけだし、その、万が一って事も考えたわ。でもねさっき兄上に会って思ったの。
ちゃんと薫が日本に来るまで待っていてくれた!ってね。

兄上はああして眠っているけどちゃんと聞こえているはずよ!薫が助けて欲しい、救って欲しいってシャルルに言ったのも聞いているはずよ!
だから死んだりしない。私はそう思うの。あの時だって戻って来てくれたじゃないっ!
私たちは信じて待とうよ。」


薫の顔が柔らかくなったように見えた。
私の言葉を聞いて、信じようって思ってくれたみたいだった。


「そうだな、マリナ。
兄貴には聞こえてるの…か…。
弱気になっていたら笑われちまうな。
マリナがいると心強いよ、一緒に来てくれてありがとうな。」


気持ちを強く持ってくれた事に私は安心した。兄上の事でこれ以上ストレスを感じてほしくない。

二度も兄上を失う事なんてさせられない…。



私はクレールとの話を思い出していた。


愛する人との別れ…
薫と兄上、私とシャルル。
同じ別れだとしても私たちはそれぞれの住むべき場所で生きていかれる。
日本にいてもシャルルを思うのは自由だもの。シャルルが幸せでいてくれたら、それでいい。
だけど薫と兄上の別れは…死。

だから私はシャルルにどうしても日本に来てもらいたかった。
シャルル以上のお医者様はどこを探してもきっといない。
世界一、そして天才シャルルだけが兄上の治療をすることができる。

これでいい…。これで良かったんだと思えるように今は兄上が無事に戻って来てくれる事だけを祈ろう。



ガイが飲み物を買って戻ってきた。
薫が落ち着けるようにってお茶にコーヒー、紅茶、ジュースにミネラルウォーター、ポタージュを買って帰ってきた。

全種類買ったの!?ってぐらい抱えてきているのよ。
本当にガイは優しくて気が回せる人なんだわ。


「少し落ち着いたみたいで良かった。オレ、何て声掛けていいか分からなかった。マリナが一緒に居てくれると薫も心強いよね。」


私と薫を見てにっこりと笑うガイは出会った頃のままだった。
こうして3人で過ごすのは久しぶりだな。ガイと伯爵が親子だって分かった途端に2人ともモザンビークに行っちゃったしね。

薫はシャルルの様子を…
ガイは和矢の様子を…


あの時から長い時間が経って私の隣にいる人は変わっていた。
そしてあとわずかしか隣に居られなくなるんだ…


目の奥が熱くなってきて私はごまかすようにトイレへと立った。
部屋からしばらく歩くと通路にある待ち合いの椅子に座った。

シャルルとの別れの時が迫ってくる恐怖を感じる。1人になる不安…。
そばでシャルルを感じる事はもうない。
兄上の治療が終わればシャルルはパリへ戻ってしまう。





あとどれぐらいシャルルと一緒にいられるんだろう。






つづく