きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛はそこにある…je crois 7


私とジルはそれぞれの役割を果たすために部屋をあとにした。



私は居室の扉の前で深呼吸をする。
シャルルが一度決めたことを簡単に変えたりしないのはよく分かっていた。

シャルルを説得するなんて、自分に出来るのか正直とても不安だった。
でも大事な取引を反故にして欲しくはない。そんな事をしたら、当主の座から降ろされてしまうかもしれない。
またシャルルがアルディ家から追われるようなことがあったら悔やんでも悔やみ切れないもの。

シャルルはどうするつもりなんだろう。
本気で当主を辞めてもいいって思ってるのかな。
いいえ、絶対にそんな事ないわ。

とにかくシャルルに素直な気持ちを伝えてパリに残ってもらわなきゃ。

シャルルは私にとってかけがえのない存在なの。もっと自分の事を大切にしてもらいたい。


重い扉を開けて中へと入るとシャルルは机の前で書類に目を通したり、メモを書いたりしていた。
留守にするから仕事を片付けているみたいね。私の気配に気付くと顔をあげて私に視線を向けた。

「マリナ、荷物はとりあえずでいいからね。足りない物は日本で揃えればいい。
君のパスポートはオレが持ったから、何も持たなくても平気だよ。」

そう話すシャルルはいつもと変わらなかった。当主ではなくなるかもしれないのに。
こんな時でさえ私の事まで気にしてくれている。

目の奥に熱い物が込み上げてくる。
思わず、奥歯を噛み締めて唇をギュッと噛んだ。
そんな私にシャルルが気付かないわけもなくて、

「マリナどうした?カオルが心配?」

私は首を振って「違うの」とだけ答えた。泣いている場合じゃないわ。
時間もないし、説得出来なければシャルルは当主ではなくなってしまうかもしれない。
それだけは絶対にダメよ。
どれほど当主の座に返り咲く事が大変だったか私は目の前で見てきたんだもの。

危篤の知らせはどうしていいか分からないぐらい動揺したけど、シャルルを犠牲になんてできない。
私は言葉を選びながら自分の気持ちが伝わるように話した。

「薫も兄上の事もすごく心配よ。でもあんたの事も心配なの。
ねえシャルル、パリに残って自分のするべき事をしてちょうだい。」

シャルルは小さく首を振りながら私の目の前まで来ると少し屈んで視線を合わせると、

「君は何も心配しなくていいんだよ。クレアシオン=レガリアの事を言ってるんだろ?
ジルにでも聞いたんだね。
先方との約束の日を延期してもらったから日本に行っても平気なんだよ。」

そう言って微笑むシャルルを見ていたら何が真実なのか分からなくなりそう。
でもきっとシャルルは私のためにウソを言ってんだ。

「ジルは延期はあり得ないって言っていたわ。兄上の事は日本のお医者さんに頼むように手配してくれているし、私たちが日本に着くまでに適切な治療をしてシャルルが来るのを待つことにしようって決めたのよ。だから杖を取り戻してから日本に来て欲しいの。
私は自分の都合ばっかりで、あんたの立場が悪くなるなんてちっとも考えていなくて。でもシャルルも大切なのよ。
もっと自分のことを優先してほしいの。」

シャルルは私の肩を大きな手でポンポンと宥めるように叩き、机に向かうと再び書類を仕分け始めた。

「マリナ、話はまた後だ。時間があまりない。」

このまま日本に向かうつもりなの?!
取引は本当に延期出来たの?
私に本当の事を話してる?
全部1人で抱え込んでいない?

ジルが私に話してくれた事がきっと真実だと思う。シャルルは私には何も教えてはくれないんだ…。
こんな時だからこそ何でも言って欲しいのに…。
私は我慢出来なくなって机を挟んでシャルルに詰め寄った。

「シャルル、私に嘘をつかないでっ!
日本へは私と薫だけで行く。
あんたは取引に向かって杖を無事に取り戻すのよ。兄上と一緒に私、日本で待ってるから!」

その途端、シャルルは持っていた書類を机に置くと私に厳しい視線を向けて言った。


「オレにしか絶対に治せないんだっ!
行かないわけにはいかないだろ」





どうゆうことなの?!









つづく